名作と名高い作品ですが、本当に評価されるべきだと思いました。
感動した、って言ってしまうのは簡単ですが、僕はなんというか、「悔しい」とか「苦しい」っていう感想を持ちました。
ネットで余韻を共有しようかな、なんて検索をかけていたんですけど、「直子が糞女」っていう意見が散見されましたが、それはちょっと安直というか、頭に浮かんだ気持ちを吟味せずにはきだしているのではないでしょうか。
僕は、お互いがお互いのことを思って決意した結果、あのような哀切なラストを迎えてしまったのだと思います。
というか、そう考えないと僕はやりきれません。
平介が「自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ」という言葉を受け止め、それに直子は応えて、藻奈美として生きることを選んだ――つまり、平介のことを思えば、藻奈美として結婚することが一番幸せなんだ、と直子は考えたのではないでしょうか。
そしてクライマックス、結婚式のシーンですが、ここは原作と映画版ではだいぶ見方が変わってきますね。
原作では、藻奈美の正体に気づいた平介は崩れ落ちてしまいます。ここで、読者は「感情のキャパシティ」の限界を迎えてしまいます。様々な思いがどろどろに撹拌して、涙になってしまうかもしれません。
平介は直子を取られた分も殴らせてくれと文也に言いますが、その意味を前述したネットの感想では、「寝取られた悲しみだ」と解釈しているのですが、僕は必ずしもそうではないと思っています。
直子の「藻奈美として生きていく」という、平介への愛情に基づいた強い決心・「秘密」、それに気づいてしまった時のどうしようもない気持ちを、文也にぶつけようとする……でもできない。そう考えました。
一方映画版では、平介は文也を本気で殴り倒します。そして、藻奈美――直子を見つめます。カメラが花嫁の顔をアップで映し、体感で1分ほどでしょうか、静止した後、エンディングに入りました。
この時の広末涼子さん*1の微妙な表情の揺れが、視聴者の胸を締め付けます。笑おうとしているようだけど、笑うことができない。笑ってしまっていいの? 葛藤が顔を歪めています。
僕は映画版を見た時は、原作とは違う印象を持ちました。文也を殴った時は少し驚きましたが、その後の平介と直子の沈黙は、二人の今後を考えさせるような効果があったと思います。
もしかして平介は、文也を殴ったことで、直子の「秘密」を受け入れる決意をしたのではないか? 今後も藻奈美として生きる直子に、藻奈美として接していくのではないか?
……ここまで書いてきてまた胸が苦しくなってきたので、このへんで筆を置こうと思います。
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*1:1999年の映画だから、撮影時は僕より1つ2つ下?すげえかわいい。