研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

プライドを守る上司vs.変えるところは変えてもいいんじゃない部下

愚痴。

 

とても曖昧にして書いたためいまいち想像がつきにくいかもしれないが、足がつくのがいやなのでぼかしたままにする。

 

僕は会社でなんというか大雑把に言えば営業の部署にいる。製品の売り上げの数字を見てあれこれ戦略を練るところだ。仕事の1つとして、製品の製作数を決定し、製作部署の担当者に告げるというものがある。製作部署の方は当然、大きな製作数を希望する。市場にたくさん製品を送り出したいからだ。だから営業が「こんなもんすよね……」と少ない製作数を提示したりすると対立が起きることもある。まあ対立ったってそんな激しい口論になったりはしない。ただ互いに「なんとかならないっすか〜」みたいなやりとりをしつつ、落とし所を探っていく。大抵は我々営業の方が明確な数字やエビデンスを用意しているので、説得しようと思えば説得できるのだが、僕自身、製作の部署を希望しているということもあり、担当者から製品にかけた熱意を聞かされたりすると、斟酌して譲歩したくなるのだった。

 

今回のケースもそのパターンだった。僕ははじめ、その製作数を1.1(単位はぼやかします)にすることで課内の合意を取った。種々のデータを取り揃え、それをこのご時世にわざわざA4用紙へプリント・ファッキン・アウトし、課長と次長に提案&説得を試みた。とくに引っかかるところもなくすんなり受け入れられたその数字を、僕は製作の担当者に渡した。それが一昨日のこと。そして今日18時過ぎ、担当者からメールが来た。

 

「お世話になります。〇〇の件ですが、〇〇は〇〇で〜(1.1では足りないと思うあれこれの理由)〇〇です。なお〇〇は〜(こちらの1.1という決定にも一定の理解を示しているよという内容)〇〇です。そのあたりあわせたうえでご検討頂けますと幸いです。」

 

要は1.1では足りないので1.2にしてほしいということだった。それを受け、僕は次のように思った;

 

「まあべつに1.2でもいいけど?」

 

世の中には事実と解釈がある。営業系の仕事をやっている人なら誰でも分かるだろうが、数字だけでは人は動かない。その数字にどのような意味づけをするか、どのようなストーリーの上にその数字を乗せるかによって相手を操作することが(多少は)可能である。

実はこの1.1を1.2にするというのは造作もないことである。1.2にするのを否定する積極的な理由はとくにない。だから1.1がいやだというのなら1.2にしたって全然問題ない。たぶん最初に僕が1.1で説得した次長課長もそう思っているだろう。僕はただデータの中から「1.1にすべき理由」だけを抽出して話しただけだ。その気になれば「1.2にすべき理由」だけを抽出して説得することもできる。この世には事実と解釈がある、というのは、そういうことだ。

やっと本題に入った。というわけで、僕は製作数を1.2にすべきロジックを武装し、次長課長に説明した。

 

課長「うーん……」

次長「うーん、としか言いようがないよねw」

ぼく「……」

課長「……」

次長「……」

ぼく「……」

課長「1.1にした理由はっていう……まあ製作のいうことも確かにそうだけど」

次長「まあ1.2じゃなくていいの?  って思ってたけどもw」

ぼく「……(それでいいんならはやく決めて終わらせてくれないかな?)」

課長「……」

次長「……」

ぼく「……(1.2じゃいけない理由でもあるんだろうか?)」

課長「……」

次長「……」

ぼく「……」

課長「……」

次長「いいんだけど、製作の言うことホイホイ聞いて変えました、じゃ舐められるからさ」

ぼく「……はい(そういうことなのか)」

 

ぼくは1.1を1.2にするだなんて瑣末な決済は迅速果敢に終わらせられるものだと思っていた。だから結構沢山の資料を用意して次長課長との相談に臨んだ。最初は畳み掛けるように、しかし相手が決断に迷うようであればその背中を押せるような材料までも用意していた。けれどもそれらすべてをもってしても次長課長はなかなか決断しなかった。長い沈黙ののち、その理由が「舐められたくないから」ということにあることを知り、ぼくは顔を覆いたくなった。

 

たしかにビジネスでは相手に舐められないこと、瑣末な諍いで簡単に折れることを潔しとしないのだろう。自ら立場を下げることは今後の交渉力に関わる。だから簡単には屈せず、一度決めたことは出来るだけ通す、というのは重要だと思う。

 

けれどもそのスタイルが重要である局面と、さして重要でない局面があると思う。今回の1.1という決定を撤回し1.2にするというのは、さして重要ではない局面であるはずだ。だって次長課長も「まあ、1.2で不自然ではないからね……」などと言っているのだから。1.2にする理由を認めているのだから。だとすればこんなの大したことではない。1.1の決定を製作部署によって覆され、1.2に屈服する、などと考えるからいけないのではないか。臨機応変に1.2に変えて場を収めればいいではないか。1.1は間違ってました、1.2にしますでいいじゃないか。

 

時刻は19時すぎ、俺もはやく帰りたいよ。俺だって、べつの製品の0.9の決定を製作から1.0にしてくれって言われた時は戦ったよ。数字を見ると1.0にはできません、なにか強力なパブリシティがあれば考えますが、ありますか?(ないですよね)って、なるだけ角が立たないように言葉を選んで説得したよ。俺だって何でもかんでもホイホイ製作の小間使いしてるわけじゃねえんだよ。ただ変えてもいいところは変えてもいいだろう。

 

そんなことを思い、今日はイライラして帰ったのでした。