研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

最近読んだ漫画の感想

年末年始にいっぱい漫画を読もうと思ってキンドルで漫画を買ったのだが、ぜんぜん読めなかった。年末年始は主にネットフリックスで「ストレンジャーシングス」と「ブレイキングバッド」を見ていた。それはそれでわりと面白くて、フィルマークスに感想を書いた。で、先週あたりにやっと漫画を読み始めた。

 

●「君に届け

言わずと知れた名作。ちょうど僕が高校生の時にアニメをやっていて、ドキドキしながら見ていた。能登麻美子の声の脳内再生余裕です。いま6巻まで読んだ。そういや龍の兄貴めちゃくちゃイケメンだったな……とか、そういうことを思い出した。あと胡桃沢梅。何もかも懐かしい。つまんない高校生活だったが、高校時代に見てきた漫画やアニメは本当に面白かった。

 

君に届け リマスター版 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

君に届け リマスター版 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

 

 

●「君は放課後インソムニア

不眠症の男女が、廃部寸前の天文部に入って、部室でダラダラ昼寝する話。不眠症なので、夜、一緒に活動する。夜の活動っていってもエロい話じゃないよ。ちゃんと夜空を見て、星座の写真とかを撮る。ちょっと演出がキラキラしすぎてて没入をためらわれるのだが、2巻の修学旅行は最高だった。夜、テントから出てきて浜辺で二人で空を見ながら眠る。あんな修学旅行のワンシーンを体験したかった。もう戻れない夏。なんか全体的にふわふわしていて地に足のつかない感じの漫画だと思っている。主人公以外の人物の動きが見えないというか、世界観が見えないというか(世界観つっても普通の高校が舞台なのだが)。でもそれも、主人公たちのインソムニアという特性を表しているようにも感じなくもない。

まだ2巻までしか出ていないのでお手軽にどうぞ。

 

君は放課後インソムニア (1) (BIG SPIRITS COMICS)

君は放課後インソムニア (1) (BIG SPIRITS COMICS)

 

 

●「波よ聞いてくれ

札幌のスープカレー屋で働いているフリーターの女性がなぜか深夜ラジオのパーソナリティに抜擢され、それなりに人気になっていくという設定だが、ラジオをやっている話はほとんど出てこなくて、北海道奥地のカルト教団に拉致られて本部から脱出する話などが描かれている。最近読んだというか、前から読んでいたのだが最新7巻が出たので読んだ。なんか言い回しというか、突っ込みのセンスがいいんだよな。佐村弘明ってわりといろいろ描いてきた漫画家なのだけど僕はほかに読んだことがない。ほかの作品もあんな軽妙なコメディがちりばめられているのだろうか、だとしたら読みたい。

昨年11月に初めて北海道に行ったのだが、雪がすごくて、ああ、北海道というのはこういうところなんだなとなにかがわかった気になった。「波よ聞いてくれ」の見方というか、空気の感じ方もなにかわかった気になった。あの冷たい空気のなかに生きているんだこのキャラたちは……と。

 

波よ聞いてくれ(7) (アフタヌーンコミックス)

波よ聞いてくれ(7) (アフタヌーンコミックス)

 

 

●「昭和天皇物語」

半藤一利「昭和史」を底本とした漫画。といっても、創作部分も含まれているらしい。なかなか骨太な漫画だと思われそうだが、まあ漫画なのでするする読める。とはいえ日本史を全く知らない人が読むと苦労するとは思う。僕は日本史選択だったが受験では使わなかったので、ほんのさわりしか理解していないが、それでも一応知っている固有名が出てきたので、なじみはあった。

山縣有朋が「懐かしいなあ……松陰先生、桂小五郎……」とこぼすシーンが印象に残っている。そうか、幕末、明治、大正、昭和はつながってるんだ……と。

 あと原敬、ちょっと若々しすぎない?(笑)

昭和天皇物語 (1) (ビッグコミックス)

昭和天皇物語 (1) (ビッグコミックス)

 

 

 

●「数字であそぼ。」

完全記憶能力の持ち主で神童の呼び声高い主人公が京大理学部(をモデルにしたと思しき大学)に入り、数学の授業を受けるもさっぱり理解できない。いままでの、暗記だけでなんとかなった数学とはまるで違う! 挫折し、引きこもりになって2年が経過した――ところから物語が始まっていく。確かに大学の数学って「定義」から入るよなーとか思った。僕は文系だったけど数学に興味があって、なんか難しげな解析学とか経済数理学とかも履修していた。経済数理学はいったい経済とどのような接点をもつのかさっぱりわからず、ただひたすら文字のパズルを紹介されるだけで、意味不明すぎて途中から授業に出るのをやめた。なので主人公の気持ちがとてもよくわかる。まだ2巻までしかでていないけれど、集合論の紹介とかもしてくれていて、ふつうに興味深い数学漫画として展開していくのではないかと期待。とはいえ基本的にはダラダラした大学生の日常を描いたコメディなので、気を抜いて読むのがよい。

 

数字であそぼ。 (1) (フラワーコミックスアルファ)

数字であそぼ。 (1) (フラワーコミックスアルファ)

 

 

 

●「麻酔科医ハナ

「医者は崖から落ちそうになっている患者に手を差し伸べて引っ張り上げる。でも麻酔科医は、患者にひもをくくりつけて、崖の下にゆっくりおろしていく。わざと人を死の淵までもっていくんだ」というセリフでいたく感銘を受けた。確かに。それゆえ感謝もされにくい職業である、と。

もう一ついいなと思っているセリフ。「昔は麻酔も外科医がやっていた。でも今は麻酔科医というプロがやっている。外科医もできるのに、専門のプロに任せているんだ」。なかなか深い。よく「あなたにしかできない仕事をしよう」みたいなことを言うビジネス書があるけれど、そうではなく、「あなた以外にもできる仕事だ。しかし、あなたというプロがやるべきだ」というモチベーション。麻酔科医は、そういう仕事観があるのかもしれない、と思った。

わりと昔の漫画だけど、いまテレビ界は医療ドラマブームだし、これもドラマになるんじゃないかな。ただ、ちょっとセクシュアルな描写が多いのが気になるんだよな……ハナの胸の谷間強調しすぎだろ、とか(巻末のあとがきによると、編集者の指示でやむなくそのように描写しているらしい)。

 

麻酔科医ハナ : 1 (アクションコミックス)

麻酔科医ハナ : 1 (アクションコミックス)

 

 

 

●「アンサングシンデレラ」

ということで、4月から石原さとみ主演でドラマ化される漫画。薬剤師の話。「疑義照会」というのがとても勉強になった。処方箋を書いた医師に、本当にこの薬をこの分量で合っているのか? と問い合わせる行為のことを言う。つまり、薬剤師も患者の様子を見て、この調剤で本当にOKなのかを考えている。医師の書いた処方箋の言いなりではだめということだ。医薬分業。医師と対等にやりあう存在なのだ。それがちょっとかっこいいなと思った。1巻しか読んでいないけれど、まだ3巻までしか出ていないので、読んでおきたい。ちなみに、「アンサング」って何?

 

 

 

●「フラジャイル」

白衣を着ない病理医。絵がかっこいい。キンドルで買ってるけど、カバーイラストには毎回ほれぼれする。話の内容も非常にレベルが高い。専門用語も容赦なく飛び交う。これ、原作者の人大変だな。編集者もファクトチェック大変だろうな。第5巻、小児科の誤診については現役医師からの批判がある(アマゾンのレビューに書いてある)のだが、ツイッターの有名人・病理医ヤンデル先生のポッドキャストによれば、「過去、そのような誤診が起きたことがあるらしい」のだ。そういうのも調べたうえで原作をつくっているのだとしたら、これはなかなかの労作だと頷いた。

でも個人的には、その小児科医のエピソードももちろんめちゃめちゃ心に染みたが、それ以上に、製薬会社の利益相反のエピソードが記憶に残っている。MRの偉い人が、都合の悪い臨床結果をもみ消すという話なのだが。ノバルティスファーマのディオバン事件とかがもとになっているのだろうか。MRが薬箱の梱包に細工をして、ABテストを見分けられるようにするとか……素人からすると、こういうのが現実的にありうるのかどうかわからない。これはもうドラマ化したね。

 

 

●「水は海に向かって流れる」

子供はわかってあげない」の田島列島。めちゃくちゃおもしろい。なんのエピソードがってわけじゃないんだが……疑似家族の話っぽいんだよね。1巻の表紙にいる高校生の男の子と26歳の女性、いずれも家庭に問題を抱えている。それでシェアハウスというか、まあシェアハウスをすることになる。もともとその女性のほかに、女装する男、教授のおじいちゃん、高校生の男の子の叔父などが暮らしていて、そこにジョインする形に。とかなんとか設定を並べ立ててもまったく面白さが伝わらない。僕なりにこの漫画の良さを定義すると、「ほどよい気の遣い方が心地いい」、ということかなと思っている。親しい中にも礼儀ありというか。いや、わりとみんな仲いいからずけずけ言ってくるんだよ。ただ、「Aが●●しているということをBは知っている、そのことをCは知っているので、Bにはこういう風に接することにしよう」みたいな、現実でもたまにある「複雑な気遣い」が頻繁に表れる。それは彼らの心理的な距離の遠さを示しているというよりも、「Bはこういう人だから、傷つけちゃだめだよね」という、むしろ心の近さを示しているようにも思った。なんか抽象的な言い方になってしまったが……ちゃんと相手のことを思いやってこういうふうにしているんだよ、っていうのが相手に伝わってしまい、相手のふるまいにも変化を与えるというような、繊細さが乱反射していくような、そんな空間の心地よさ。そして繰り返すように、それは初対面の人たちが繰り出す「気配り」とはまた違った親密圏を形成している……うーん、これで伝わるのだろうか。とにかく3巻以降も楽しみ。

 

水は海に向かって流れる(1) (週刊少年マガジンコミックス)

水は海に向かって流れる(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

●「鬼滅の刃

 社会現象と化している。めっちゃめちゃ売れている。どこの本屋に行っても「おひとり様各巻1冊のみ」「次回入荷日は未定です」の張り紙が。何がそんなに面白いのか……前から関心はあり、去年の夏に1,2巻は読んだがいまいち入り込めない。年末年始、先輩が「6巻から面白くなる」というので今日ネカフェで6巻まで読んでみたが、やはり入り込めない。キャラクターがみんな子供じゃん。それで感情移入しづらいのかなとか思っているのだが、それはつまり僕が歳をとったということを意味しており、つらい。でも善逸のキャラはいいと思ったよ。

鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックス)

鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックス)

 

 

そんな感じ……次の休みは、フラジャイルの続きを読むなどするかと思われる。君に届けは、ゴールまで長い! 全31巻だっけ? いつ読めばいいんだ。あと読んでる最中に思い出したけど、僕は「ちはやふる」も結構キンドルで購入していたのだった。大学卒業してから読んでない。やはりフォローしたほうがよいのだろうか……