研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

2020年渋谷ハロウィン観察記 我慢できなかったか…なぜ若者たちは「密」を求めたのか

やはり我慢できなかったか――

 

コロナウイルス感染症発生を受け渋谷区長が「今年のハロウィンは渋谷に来ないで」と声明を出し、KDDIと共同してバーチャル渋谷ハロウィンというオンラインVRフェスを催し、若者の「密」を避けるよう奮闘したものの、20時30分時点で、筆者の感想としては「だいたい例年の7割ぐらい」の混雑になってしまった本日の渋谷。18時過ぎに渋谷に到着し、練り歩いた感想を記す。

 

駅構内には渋谷区によるポスターがたくさん張ってあった。「渋谷に来るな」というよりは、「オンラインで楽しもう」という前向きな姿勢を打ち出すものだ。

 

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ハチ公口に出る。人は、少ない……ツイッターで「渋谷 ハロウィン」とツイート検索しても「仮装が少ない」などのコメント多数。確かに、普通の土曜日といった感じの込み具合だ。

それはもしかすると渋谷の駅改良工事も関係しているのかもしれない。いつもであれば見物客でいっぱいになっていた、東急とマークシティの連絡通路が閉鎖されている。Qフロントのスタバと双璧を成す「スクランブル交差点観察の特等席」。ここに入れないのは残念、と思う人も多いだろう。

 

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そういえばここ、工事されてるんだよなあ……

 

交差点を渡る。警察多数、装甲車やパトカーも多数止まっているが、まだ「DJポリス」のような、拡声器で歩行者の横断を促すようなやかましい状況にはなっていない。


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コロナ前の土曜日と変わらない程度


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喫煙所は封鎖されていた

 

109方面に歩いてみる。2年前、ここに女子ふたり組がメイドか何かの仮装をしていて、それを一眼レフで撮らせてもらったことを思い出す。


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仮装をしている人はほとんどいない。200人に1人ぐらいの割合だろうか……


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センター街への路地。酒を飲む人も、タバコを吸う人もいない


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「感染者ゼロ、迷惑行為ゼロ」を掲げる渋谷区


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店先には除菌シートなどのアイテムが並べられており、仮装グッズは見られなかった


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東急百貨店の前の交差点。両脇に装甲車とパトカーがあるが……

 

とにかく人が少ない。そして渋谷区が出した「飲酒禁止」がよく守られている。また、みなマスクをちゃんと着けているのも興味深いが、それはたんに「急に寒くなってきたから」だろう。マスクは防寒具にもなる。

で、センター街の方にも入ってみた。

 

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中華料理屋「兆楽」や交番がある三角地帯。やはり人が少ないが、ここら辺から仮装している人を見かける割合が100人に1人ぐらいになったように感じる


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公園通りへ至る道。外国人の姿もよく見かける


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センター街中心部。警官が「立ち止まらないでください!」としきりに呼びかけている

 

ところで、上の写真で手前に映っている「SECURITY」という服を着た人たちはどういう人なのだろう。渋谷のあちこちで見かけるが、警察関係者なのか、警備会社のアルバイトなのか……まさかそういう「仮装」だったりして(そんなわけないか)

 

そして道玄坂を登っていく。しかしここも落ち着いている……

 

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ここでセブンイレブン渋谷道玄坂店に入ってみる。入り口には「取材やアンケート、撮影、インタビュー等は全てお断りしております」という立て看板が。また、「店内撮影禁止」の張り紙多数。一昨年渋谷ハロウィンでコンビニを訪れた際は、弾力的な需要に合わせ酒類の在庫を極端に多く確保している様子だったが(なにしろ路地裏でテキーラ1ショット500円で販売する人もいたほどだ)、今年はとくに変化がなかった。

 

そのお隣、ファミリーマート道玄坂中央店に入ってみる。ここは撮影禁止のポスターなし。酒類の棚は、なんとビニールシートがかけられて販売が停止されていた! なんでも、「渋谷区の要請を受けて10月31日18時~11月1日5時までの間、酒類すべての販売を自粛させていただきます」とのこと。


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あ、ノンアルのビールテイスト飲料は買えるのね

 

「要請により自粛」……数か月前、あちこちで見られた光景だ。いまはそれが渋谷に受け継がれている。

 

道玄坂の松屋で晩ご飯。

 

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食べ終わって道玄坂を下っていくと、不自然に輪になっている集団が。外側に背を向け、飲酒・喫煙を見られないようにしているようだ。驚くべきことに、彼らの横を2名の警官が素通り! 明らかに取り締まりの対象だが……

 

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植え込みに座る男性が、スーパードライのロング缶をもっている

 

19時30分、

スクランブル交差点

しかしそれはモラルハザードの氷山の一角に過ぎなかった。道玄坂を下っていくにつれ、植え込みに捨てられたチューハイの空き缶、周囲に目配りしながらコソコソとビールをあおるスーツの男性など、いつもの渋谷と変わらない風景が次々と飛び込んできた。

 

時刻は19時半ごろ。109前の交差点に来ると、渋谷を訪れた1時間前とはまるで違う光景が広がっていた。まず、警察による呼びかけがすり鉢状の渋谷全体にこだましていた。「まもなく信号が赤に変わります! すみやかに横断ください! センター街で立ち止まらないでください!」

 

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明らかに人が増えている……

驚いてしまった僕は、109の階段を上って動画を撮影し、Youtubeにアップロードした。これが初アップロードだった。

 


コロナ禍の渋谷ハロウィン DJポリス出現 19時半ごろ

 

ある程度「人ごみをかき分け」ながらスクランブル交差点の近くに行く。

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高いところから人々に呼びかける警察

 

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タワーレコードのお手洗いを借りようとしたら、入り口に無慈悲なポスターがあった。これは去年からあったのかな……

 

そして今年一番気になっていたのが、リニューアルされたばかりの宮下公園。「ミヤシタパーク」だ。ここに人はいるのか。


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いない……


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屋上庭園には人はいるが、「密」とはいえない状況。みなゆったりと思い思いの夜を楽しんでいる


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「のんべえ横丁」を俯瞰で撮ることができるというのは個人的には喜ばしい発見(ハロウィン関係なし)

 

飲酒禁止というのは、あくまで「道路・公園などの公共の場」においての話なので、当然居酒屋では飲むことができる(さっき松屋で飲んだし)。それゆえミヤシタパーク一階の飲み屋街には酔客がたむろし、マスクなしで大声を出すようなシーンも多々見られた。が、これもハロウィンとは独立した事象として考えるしかないだろう。


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そもそもミヤシタパークの見物を目的に来た人も多いと思う

 

20時半ごろ。18時ごろとくらべてだいぶ「密」になってきた。そろそろ脱出したほうがいいと判断し、最後にスクランブル交差点を渡ってJRに乗ることにした。


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「外出自粛モード」とはなんだったのか……

 

山手線のプラットフォームへと階段を上る途中、改札へ降りていく男性とすれ違った。彼はスクランブル交差点方面のガラス窓の向こうを見てこう言った。

「え、意外と(人が)いるじゃん!」

 

そう、彼の言う通り。結局、意外と人が集まってしまったのだ。コロナ禍のハロウィンでも。


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JRに乗る人よりも、JRから渋谷で降りる人の方が、多かった

 

なぜ、賑わってしまったのか

電車で写真を見返しながら考える。18時時点で人はかなり少なかった。ツイッターを見ても、「人が少ない」というツイートが多かったのは前述したとおりだ。しかしそれが19時、20時となるにつれて、人混みが加速していった。

 

一昨年、渋谷ハロウィンに来た時はどうだっただろうか? 人は徐々に増えていっただろうか? ……覚えていない。だが、間違いなく言えるのは、「18時の時点ですでに限界まで混雑していた」ということだ。

 

ここからは推測だ。「今年の渋谷ハロウィンは人が少ない」という言説がSNSで広がっていった。それを見た若者たちが「えー本当か? ちょっと見に行ってみよう」と渋谷に繰り出していった。それを見た人が「渋谷、徐々に人が増えているな」とつぶやく。それを見た若者が「なんだ、今年も渋谷盛り上がってるんじゃん!」と考え、渋谷に向かっていった。そうして群衆が集結していった……

 

もしそうなら、SNSがのリアルタイム性や、人々の行動を強く規定してしまう力というものについて、改めて深く考えてしまわざるを得ない。SNSの中の渋谷とリアルな場の渋谷が相互に作用して、イメージと現実の間を情報が往復し、理想が現実を塗り替えていく……それは一昔前なら、「希望」を意味していた。しかし今私たちの目の前にあるのは、その逆の出来事にほかならない。

 

 

 

※一昨年書いた日記

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