研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

藤井風「Love All Arena Tour」@宮城 2022/12/18 参戦レポ

藤井風のライブに行ってきた。そもそも大きなライブに行くことが初めて。ローチケでチケットを9公演申し込んで抽選を待ったところ、2公演当選した。日曜日の公演。たぶん帰りの新幹線は混むだろうなと思い、1泊して月曜日の朝に変えるプランを立てた。
仙台駅に到着
12時過ぎに到着。まず、寒いなと感じた。東京とは明らかに違う。駅は外と区切られておらず、外気が入ってくる。コア側に行けば少し免れるけど、それでも暖かくはない。
昼ごはんを食べたいのだが、駅ナカの牛タン屋が集まる牛たん横丁はどこも行列だったので、適当な店で済ませた。

一見空いているように見える店だったのだが、予約が結構入っているそうで、その仕込みやらなにやらで忙しそうで結構待たされた。カウンター席だったのだが、店員さんたちがみんな仲良さそうにしゃべっているのが印象的だった。料理は普通だった。
 
開場は17時。シャトルバスで1時間かかると見積もっても、かなり時間がある。仙台駅名物のペデストリアンデッキを歩いていたら、映画「偶然と想像」のラストシーンのロケ地であることに気づいて写真を撮った。

このペデストリアンデッキに来たのは2度目だが、映画を見たことでちょっと見え方が変わった。
 
シャトルバスに乗る
15時ごろになりシャトルバス乗り場に歩く。すごい長蛇の列が少しずつ見えてきて、「ウソだろ…?」と驚く。客は、9割がた女性。その構成比を知らなかったのでびっくりした。ジャニーズのライブに混じったみたいだ。でも40,50代ぐらいの女性も多く、そこはジャニーズでもKINKI-Kidsとかのファン層な気がした。
まあでも、シャトルバスの列だから女性が多いだけなのかもしれない。カップルや、男性ファンは、車を運転して現地に行くことが多いのかもしれない。と予想した。
バスに乗り込む。周りを見渡しても男性はいない。ていうかこのバスで僕だけなんじゃないか? とさえ思う。4列シート。補助席も全部稼働して、最大収容定員ぴったりで発車した。すごい。僕は進行方向左側の通路側席だった。隣には推定40代の女性が座っていて、僕が「失礼します……」と座っても一瞥もしなかった。
 
出発してぼんやりしていると、僕の左斜め前の席の女性が、僕の前の女性に話しかけた。「どこから来られたんですか?」
話しかけた女性はとても若く、大学生ぐらいに見えた。で、話しかけられた女性は4,50代という感じの声だった。会話を聞いていると、高校生の娘さんがいるとのことだった。
 
この2人、初対面で、しかも母と子ぐらいの年の差があるのに、ずっと楽しそうに話していた。出身地、風くんを知ったきっかけ、今回のライブの旅程、ライブの座席はどこか、ほかに好きなアーティストは、宮城は来たことあるか、などなど……トピックは多岐にわたった。
話しかけたほうの大学生らしき女性はすごく落ち着いていて、会話をするのがとてもうまいなと思った。適切な間をとってうなずいて、合いの手を入れて、共感して、そして質問ベースで話を展開していく。すごく気持ちのいい雑談をしているなと感じ入りながら聞いてしまった。
初対面でも、こんなに長々と話せるのか……まあ確かに、ライブに行くシャトルバスにいるんだから、共通の趣味があるという前提はあるわけで、だから話も合うはずだろう。
それにしても、こうやって隣の席になった人と雑談するというのを僕はやったことがないし苦手意識があるので、心から関心してしまった。
 
セキスイハイムスーパーアリーナに到着。

結構山の上にある。空が広い。そして寒い。

ドームのほうに行くにつれ、とんでもない数の人が入場列に並んでいる景色が見えてきてすごいなと思った。コミケ待機列みたいだった。まだ開場時刻じゃないのに、寒くないのだろうか。

トイレに行こうと思って看板の案内に従ってドームの裏手に行ったら、あちこちに仮設トイレが設置されているようだった。どれもものすごい長蛇の列で一瞬かなり焦ったのだが、そのすべてが女性用トイレから伸びている列だった。男子トイレは一人も並んでいなかった。
裏手に高い丘があって、誰もそっちのほうにはいなかったのだが、景色がよさそうだったので登ってみた。いい景色だった。すすきが風になびいていた。陽が落ちていくにつれ稜線がくっきりと見えていった。

 
ライブスタート
入った。こんな感じで、霧? 水蒸気? でアリーナが満たされていて、それが照明の灯りをキラキラ反射させていて幻想的な感じになっていた。霧というか、単純に人が集まったことで温まって結露してるだけなんだろうか。よくわからないけど、ボクシングとかプロレスのリングみたいだなと思った。

スタンド席に座る。ステージは正方形をしているのだが、その中心から1辺に垂線を下ろした時の延長線上に位置する座席だった。ようするに、わりといい席。アリーナ席は距離は近いのだと思うけど、おそらくステージはわりと高さがあるため、仰角に見上げる姿勢になって少し疲れるのではなかろうか。映画も後ろの席で見る派なので、これでよかった。
 
前の席には僕の母ぐらいの女性が隣同士で座っていた。2人とも単独参戦のようで、片方が「どこから来られたんですか?」「楽しみですね!」とか話しかけていたんだけど、話しかけられた方は「……そうですね」みたいな感じで、オペラグラスを取り出してステージを観察するなどしていた。こういう感じになるのが怖いんだよなー。
 
僕の周りは、左隣はスタート直前になって40代ぐらいの女性が一人で座ってきて、右隣は誰も現れなかった。
で、時間になって、確かフッと照明が消えて真っ暗になった……と思う。で、待ってたら、どこかからワアアッと声が(その声も女性の声の集合体だったのでやはりファンはほとんど女性なんだと実感した)上がり、そちらに目をやるのだが何も見えない。と思ったら、ステージの上に上がっているライブビューイングに、自転車に乗ってアリーナ席の前を走る藤井風が映っていた。すごい出だしだ。
 
よく見えないので座っていたスタンド席の観客ほぼ全員が立ち上がった。そうだよね、ライブって座って見るイメージないもんな……繰り返すが僕はちゃんとした音楽ライブに参加するのはこれが初めてである。で、藤井風が正方形のステージの周りをゆっくりと、アリーナ席の観客に手を振ったりしながら周回した。僕がいるスタンド席の辺のところに来たところで、周囲がワアアッと盛り上がり、みんなが藤井風に向かって手を振った。
 
……とか、いちいち描写していたら終わらないな。セットリスト全部について書いていたら終わらないので印象的なところだけ書く。
 
「もうええわ」
「もうええわー」のところをみんなで歌いましょう、ということで風くんがピアノの伴奏をして、最初に観客皆で練習した。「めっちゃだるそうに歌ってください」と風くん。「もおええわあ」と斉唱した。楽しかった。僕は全編歌ってた。マスクつけながら歌うのめっちゃうっとおしい。
 
「やば。」
一番最後、切なげなピアノソロで終わる曲ですが、そこで風くんが、上空に鍵盤を探し求めて人差し指をチョンチョンってするようなしぐさをしているのが印象的だった。
 
「へでもねーよ」
赤い照明が使われて雰囲気がガラリと変わり、盛り上がって来たな!って感じがした。サビのところでまわりの人たちが、片手を斜め上にまっすぐ伸ばし、まるでデカいボタンをプッシュするのを反復するような動作……ええと、高校球児の「宣誓!」のポーズで手を上下に動かすようなしぐさでビートに乗っていて、楽しそうだった。のだが、それを真似するのがすこし恥ずかしくて、めっちゃ肘を曲げてだらしない格好で真似していた。
 
「まつり」
イントロのピアノがキレイ。イントロから盛り上がった。2番に入ったところ、「君が派手に笑ったせいで 夏の熱さ体を焦がして」のところで照明がガラリと変わってうおーってなった。MVのあの忍者屋敷みたいなのを想起させる演出。サビで風くんも観客もあのよさこいみたいなダンスをやっていて、僕もそれを真似したのがすごく一体感があって楽しかった。
あの振付やったことなないしちゃんとできてるかなとか不安に思ったけど、途中から楽しくてどうでもよくなった。自分は無数にいるファンの中のただ一人にすぎず、個人としての主体性を失い、集団に埋没していくことの気持ちよさみたいなものに浸っていった。
 
「燃えよ」
ステージの端のところから炎がブワっと出ててすごかった。マリオの砦の罠みたいだった。サビで観客の人たちが手をグーにして斜め前に突き出していて、なんかそれを真似するのはすごく恥ずかしい気がしてやめてしまった(それをやっているファンの人たちを批判しているわけではなく、僕の自意識がダメだということを言いたいだけです)。
 
「きらり」
かっこいいー! 爽やか。ダンスも最高~。知ってる曲を目の前で生でやってくれるというだけでこんなに高揚するのはなんでなんだろうね。ライブっていいですね。
 
「さよならべいべ」
これはラスサビが最高に盛り上がった。いままで音源で聞いてた時も終盤の畳みかけがすごいなと思っていたけど、ライブで照明やらなにやらの演出と組み合わさって総合芸術として目の前で提示されると、全部が渾然一体となってすごいエネルギーのうねりというか、奔流のなかに飲み込まれていくようなすごさがあった。手を突き上げてぴょんぴょん跳ねたくなる(実際に跳ねたかどうかは別)
 
「死ぬのがいいわ」
生で聞くとなんかすごい歌詞の切迫さというか、雑駁にいうと「メンヘラ感」が伝わってくる歌声でいい。照明の演出もすごかった。赤くて、ステージが血に染まってるようだった。最後、僕のいるエリアのほうに向かってバタン……と地面に倒れこんでしまった(紅白でも同じ演出でしたね)。死んだ!
 
「青春病」
倒れこんだ風くんが小さな声で「青春の病に冒され……儚いものばかり求めて……」とアカペラで歌い始めて、風くんがゆっくりと立ち上がり、照明が一気にスカイブルーに変わって、音楽が流れ始めて、ものすごい高揚感がこみあげてきた。一番好きな曲なんです。もう大好きすぎて、めっちゃ歌ってしまった。
ラスサビの転調前のところでみんなで振付やってるとき、音楽に合わせて観客みんなで一体になってるのが楽しすぎてめっちゃ恍惚としてしまった。右手と左手でこぶしを作って交互に前にパンチするみたいな振付なんですが、歌詞が「~一度たりとないのに」のところでこぶしを開いて人差し指を立てて、そのあとの「青春のきらめきの中に」のところでボールを投げるような動きに展開する、という一連の流れを体がかってにやっていて、自分のノリがMAXになっていることがすごかった。し、何も準備していないのに示し合わせたかのように観客みんなが同期して同じ動きをしているのが、かつて感じたことのない連帯感を僕に与えてくれてやばかった。
 
「grace」
いい曲ですよね……もうこれは音楽を聴くというか、宗教的体験(? ちょっと今センシティブな表現かもですが)ですよね。歌詞がスピってるとかいろいろあるとは思うんですが、純粋にメロディが耳心地がいいし(ゆえにヤバいのではという向きもあるとは思いますが)、心に残るコード進行だと思います。
アウトロのところで、MVでやってたあの謎ダンス(両手を合わせて顔の右上、左上に交互に突き上げる動作を反復する運動)をみんなでやってるのも楽しかった。し、パーカッションがトントコトントコいってるのが最後終わった時にみんなクロールの飛び込みみたいに上にニョキっと手を突き上げたのもMVと同じで楽しかった。
 
「何なんw」
「お土産に撮って行っていいですよ」と風くんがアナウンスして、みんな一斉にスマホを取り出す。動画を撮った。スマホを構えるのを優先していたので、音楽にのって何かをするのは難しかった。ステージからは客席はどんなふうにみえてるんだろうな……とか思った。

という感じで終了。アンコールとかするのかな? と思って待ってたんだけどわりとみなさんササっと帰って行ったのでやや残念だった。風くんもMCというかおしゃべりする感じではなく、わりと曲のパフォーマンスがメインで、モデレートなライブだなと思った。
その後はめちゃくちゃ寒空のなか物販列に並び、ポストカードとスマホストラップを購入した。

 

帰路
で、シャトルバスに乗って仙台に戻った。このシャトルバスがすごいなと思った。1時間ぐらい並んだんだけど、駐車場には50台ぐらいのバスが待機していて見たことのない景色だった。どれも「●●観光」「●●交通」など別々の名前が書いてあって、各社総動員のアベンジャーズ状態だった。
効率よく客を送り出すため、それぞれのバスに過不足なくぴったりの人数でブロッキングしなければならない。そのためスタッフが、交通量調査とかで使うカウント用のあのアイテム(数取器というらしい)をものすごい勢いで連打して客をさばいていた。この極寒の地でよくもまあ指が動くなあ……で、バスに乗せる時も、バスが4台ぐらい並列に並んでいて、そこに客が乗り込んでいく。
で、一番道路側のバスから順に出発したら、それらのバスの後ろにまた4台のバスが待機していて、待機列側に前進してきて、客が乗り込む。……というフォーメーションがあって、長年のイベント運営からこれが最も高効率だというノウハウがあって、こういうふうにしているんだろうなと想像すると味わい深かった。
 
あとは仙台の飲み屋で牛たんを食べたり……

めちゃくちゃ体が冷えていたのでラーメンを食べて温まった。

ちょっと歩いたところにあるアパホテルに宿泊し、大浴場で体の芯まで温まった。
で、翌日新幹線で帰ったんですが、待合室に「HEHN RECORDS」のロゴが入ったトートバッグを持っている人がちらほらいた。あ、同じように1泊して帰る人もいるんだなあ……と心が温まりました。