研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

成長できるとはいえ、失敗の痛みはいつも苦しい

7月はともかく、8月はかなり忙しい日々だった。とくに最後の1週間は、人生でもっとも忙しい1週間になった。望んだスケジュールではない。計画通りに進まなくて、その結果、殺人的な進行となった。

といっても、月の残業時間を計算したら80時間だったから、もっと働いている人はいるといえばいる。しかし、チームのみんなで励まし合うこともできず、というか助けを求めても取り合ってくれないという絶望感を抱えながら、たった一人で案件をゴールまで導いたのは、なかなかすごいことをやってのけたという感じもする。

この地獄を経験したから、今後はちょっとやそっとのことではびびらなくなったような気もする。毎回負荷がかかっているから、筋トレのように、次はより大きな困難に立ち向かえる強さを得たように思う。前向きに考えれば、だが。

渦中にいたまさにその時の日記というかメモを読むと、助けてくれない上司に対する怨嗟がつらつらと書かれていて、それこそが真面目に向き合うべき意見のような気もする。

つらかった体験を遡行的に美化するのは、人生を幸福に生きる戦略のひとつではあるが、そればかりしていると、周りの人間に搾取されることを看過する人間になってしまう気がしてならない。

なにが問題の原因だったのか、どうすればよかったのか、あるいは自分にはどうしようもできなかったのか、環境に責を帰するところはあるか、あるとすればそれを少しでも自分でコントロールできる部分はあったか……振り返りたい気持ちがある。

9月頭にすべてを終えてから、有給を少し取った。といっても、8月に休日出勤していたぶんの代休となるだろう。休んではいるがトータルでは休んでいないことになる。

休みの日は、ヤマハのサウンドバーを買って家で映画を見たり、やりたかったデザインの習作を作ってみたり、読みたかった本を買って読んでみたり、映画を観に行ったり、恋愛リアリティ番組(ラブ・トランジット2)を一気見したり、1人で一泊旅行に行ったりした。

そんな風にして細切れに休息を取っていた。

しかしそれも束の間、塩漬けになっていた案件が再進行したと思いきや、まさかの大トラブルが発生。すべてがひっくり返るぐらいの大事になった。茫然自失。現実感がなくなり、本当のこととは思えなかった。こんなことってあるのか? 幽体離脱して少し離れたところから自分を俯瞰しているような気持ちだった。妙に冷静だった。

その後、状況をまとめるメモをつくって、会社に向かって街を歩いている最中に、渦中で受けた衝撃がボディブローのように体を揺さぶってきた。お腹は空いていたけど、何も体に入らなかった。タリーズでハニードーナツとコーヒーを買ったけど、ドーナツが全然美味しく感じられなかった。

上司に詳細を相談し、対応策を検討するなかで、やっぱり自分がダメだった、と思うようになった。上司はあまり僕が自責しすぎないように配慮しながら冷静に話してくれた、と思う。だから、話が終わってからの自分のなかのぐるぐる思考がキツかった。ふと気を抜くとあの現場がフラッシュバックして、うわの空になる。

徐々に自分の問題点に気づかされていく。

俺はマジで仕事の基本も分かってない奴なのか?

今までそれなりにやってきたのは、すべて「たまたまできた」だけだったのか?

俺はもしかして、どうしようもなく仕事ができない奴なのか?

そこまで思わされたのは、たぶん、社会人2年目のあの日以来かもしれない。いや、今回のほうが、相手が相手だけに、衝撃は大きかったかもしれない。人生で一番食らったかもしれない。

あまりにキツくて、その夜は人の家に泊めてもらった。夜、上司から来たなぐさめのメールが本当に頼もしかった。

翌日、いろいろ準備してリカバリーのための対応をした。思ったよりもうまくいった。想定していた最低の状況よりは良好な反応を得られた、と思う。

トラブル発生時の対応はどうすればいいか、というのを今回の事例から学ぶことができると思う。たぶん、振り返ればいい経験になるのだと思う。成長の機会になったと思う。

だが、成長のたびにこんな厳しいメンタル状況に追い込まれなきゃいけないのか、と思うとキツい。今後もこういう、痛みを伴う失敗を繰り返すのかよ、と。

もちろんいくつになっても失敗はするのだろう。成長しようという意思がある限り、その痛みは大切なものなのだろう。

しかし他方……それはトータルで人生を幸せにするのか? と、今回真剣に考えてしまった。「成長」というマジックワードを振りかざして、つらかった過去を遡行的に美化することで、傷の痛みをなかったことにしてないか?

まあ、まだこの件は決着してないので、トータルでどうなるかはわからない。それがわかるまで、いまは精いっぱいやるしかない……。