研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

コーヒーカップをやさしく置くということ

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冬になると「指ポキポキ」がやりやすくなる。あの、 ヤンキーがケンカの前に手指の関節を鳴らす動作のことだ。 首や腰を回したらゴリゴリってなるのと同じで、 なんだか気持ちいい気がする。

数年前、 営業の部署にいたある冬の夜、残業で疲れ、 デスクで何気なく指ポキポキをやった。 そしたら隣の席の女性の先輩に言われた。

「ねえ、それ怖いからやめて?」

「こ、怖いですか?」

「うん…」

高校とか大学とかで、 たとえば手持無沙汰でペン回しをするかのように、 指ポキポキをさらりとやっている同級生はいたけれど、 それをことさら怖いとか、 敵意を向けられていると感じることはなかった。

まあでも言われてみれば確かに、 指ポキポキはヤンキーがケンカの前にする動作なのだから、 周りの人からすれば恐怖を惹起するのかもしれない。 試みに検索してみると、「牽制されているように感じる」「怖い」 といった悩みを吐露する人がいた。それ以来、 指ポキポキは人前でやらないようにした。

で、部署は変わって今。隣に座っている庶務の女性は、 ホチキスをデスクトップパソコンの本体の上に置いているのだが、 ホチキスを使い終わって元の位置に戻すときに、たたきつけるように「バン!」 と置く癖がある。それが僕にとってちょっと怖い。 パソコン本体が僕の机に一番近いところにあるので、 びっくりしてしまうのだ。なんか怒ってるのか? と思ったりする。そんな感情的な人じゃないのは知っているので、 大丈夫だとはわかりつつ、怖い。

ああ、これが指ポキポキの怖さなのか、と思った。

それに気づいたとき(約2か月前)から、 僕はいろんな動作に気をつけるようになった。一言で言えば「 物を優しく扱う」ことだ。

木の椅子を引くときは引きずらないで持ち上げる。

スマホを机に置くときはまず手前の角、次に長辺を接地させて音を立てずに置く。

ペン立てのペンはゆっくりと抜き取り、ゆっくり戻す。

首筋がかゆいときは人差し指の爪先でスッスッとかく。

パソコンで文章を書くときは無駄に指のストロークを大きくしてタイプ音を立てたりしない。

お箸やスプーンなど食器を置くときはゆっくりとそろえる。

口をつけたコーヒーカップをソーサーに置く時、音をなるべく立てないようにする。

物を優しく扱う。

まあ、別に自分が実践してるからといって、「みんなもやるべきだよ!」と言うつもりはないし、そういう「物を優しく扱わないヤツとは違って俺はちゃんとしてる」的分断はしたくないのだが、ところでなんていうか、僕みたいに「気づき」を得て変わる人もいれば、もっと早い段階で、あるいは家庭で、躾の一環としてそれが身についてる人もいるわけじゃないですか。そういう人とそうでない人の違い、差ってなんなんだろと思ったりする。映画「華麗なるギャツビー」でレオナルド・ディカプリオ演じるギャツビーが普段は金持ちとして優雅な振る舞いをしてるのに、お茶の場でいろいろいさかいを起こして"F××k!"って叫んで育ちの悪さ(?)を露呈してしまい、周りにいる上流階級の人たちドン引き…みたいなシーンがあるけど、ああいう風になるのは怖い。まあ、別に上流階級の人たちと仲良くする予定もないけど。ていうか上流階級って何?