研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

「涼宮ハルヒの憂鬱」聖地・西宮でスタンプラリーをしてきました

【前回のあらすじ】

神戸出張でひと仕事終えた僕は、初めての兵庫県ということもあり、ハルヒの聖地である西宮北高校を訪ねた。山登りで疲弊した身体で東京に帰ろうと電車に乗ったそのとき、西宮市内でハルヒの期間限定スタンプラリーが行われていることを知る。「ここで帰ったら、一生後悔する――」スマホでネカフェの場所を検索しつつ、明日の仕事をサボることを決めたのだった。

 

 

つづき。

阪急甲陽園線で夙川に着いた。時刻は19時過ぎ。明日は朝からスタンプラリーをを回る予定だ。どこからスタートするべきか。ググれば情報はすぐ出てきた。偉大な先人が、各施設の営業時間とアクセスについてまとめてくれている。それを読み、具体的なプランはともかく、おそらく西宮北口駅周辺からスタートするのがよいと思われた。

 

で、西宮北口駅へ。阪急神戸線で2分。大きな駅だ。北側にはアクタ西宮東館・西館、南側には巨大ショッピングモールの阪急西宮ガーデンズがある。しかし経済活動が行われているのはほとんど駅周辺のみで、あとは閑静な住宅がスプロールしているようだった。典型的な地方都市の風景だ。

 

しかし散策するにしてもクタクタだ。実は、新神戸に向かう新幹線で崎陽軒のシウマイ弁当を食べて以来、何も口にしていない。それも朝10時ごろ、品川―新横浜区間でのことだ。腹ごしらえということで食べログでラーメン屋を検索したら、水輝(あくあ)というラーメン屋がおいしいらしい。そこでチャーシュー麺とビールを頼んだ。ビールのジョッキがありえないほどキンキンに冷えていた。

 

お腹をさすりながら店を出る。静かなものだった。車通りも減り、信号機が淡々と明滅して孤独に仕事を続けている。行動開始。南側の阪急西宮ガーデンズへ。

 

これがほんとうに大きなモールだった。入ってみるまでわからなかったのだが、とにかく奥行きがある。そして天井が高い。ラゾーナ川崎が小さく感じる。豊洲のららぽーとみたいな構造だが、それよりも横にも縦にも広い。入り口が4階分ぐらい吹き抜けになっている。銀座シックスみたいな高さだが、いわゆる直線的な吹き抜けではなく、フロアが階段状に重なっているので、より階層性が見やすくなっている……なんといえばいいのか、巨人用の階段に人間用のエスカレーターがつけられたような感じ。

 

それを上昇しながら、まずは最上階のブックファーストへ。仕事柄、この書店の存在は情報として知ってはいたのだが、実際に訪れるのははじめてだった。どんな棚作りなのかをさらりと見て、ユニクロへ。なんせ日帰りの予定だったので、そういう準備がない。明日の着替えを購入。ショッピングモールには何でもある。

 

閉店時間ギリギリだったがすぐ立ち去るのも嫌だったので、屋上のテラスに行ってみる。西宮市をなんとなく見渡すことができる。光っている。とはいえ、北高の前から見下ろす景色のほうが遥かに綺麗だった。モールが広ければテラスも広くて、子ども用の有料の遊び場なんかがあった。ゴーカートもできるようだ。当然夜なので閉まっている。

 

歩を進めると、なんかのモニュメントを中心とした庭園が広がっていた。温かな間接照明が施されていて、景色を楽しむカップルが等間隔に並び夏の夜風を浴びていた。それを横目に室内にもどり、モールをあとにする。

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謎の立体構造物。右側には人工芝が広がる

 

歩き疲れてきた。あと少しだ、と自分に言い聞かせ、いちばん近くてシャワー設備のあるネカフェに向かう。しかしこれが意外と遠い。少なくとも、徒歩で行くような距離ではない。夜21時前、人気のない住宅街を進む。

 

途中、セブンイレブンで飲み物を買う。店員さんは標準語で接しているが、「ありがとうございます」の「ます」のトーンが関西出身であることを如実に表している。どうしたって隠すことのできないイントネーションにおかしみを感じたりする。ネカフェへはひたすら線路沿いを歩いていく。阪急神戸線の線路だ。踏切に差し掛かると、すぐそこに店がある。

 

どうやら唐揚げ専門のレストランと併設されているらしい。入ったら、唐揚げ店のスタッフとしてテーブルの片付けをしている人がカウンターに来てチェックインをしてくれた。どういうことなんだろうか。人手が足りないにしても、ダブルワークは大変ではないか。まあ、そんなに人も来ないのだろう。この住宅街である。駅からもだいぶ離れている。地方都市のネカフェって一体だれが利用するのだろう。

 

漫画の棚は想像通りあまり清潔感は感じない。まあ漫画は読まない。部屋は禁煙用がたったの5室、奥に喫煙用ルームへの扉もあったがその中がどうなっているかは知らない。この店、カラオケ店も併設されている。カラオケの部屋は扉一枚隔てたところにあり、ドリンクサーバもそこにある。カラオケの部屋は3部屋だった。こんなに小規模な店は初めてなので、いろいろと衝撃を受ける。なんというか、言葉を選ばずに言えば、生産力が低いというか……まあ都内の需要と比べるもんではない。

 

自分の部屋にもどり、PCを起動。ブラウザを開き、ハルヒのスタンプラリーについて詳細を調べようとする。が、動作が重すぎる。画面遷移に10秒ぐらいかかる。ネットが遅いというのもあるかもしれないが、そもそもPC自体のスペックの問題な気がする。なんでこんなに遅いんだろう? 

 

 

 

よくわからんが、まったく使い物にならんので、諦めてシャットダウンする。つづいてスマホやらモバイルバッテリーやらを充電しようとするが、ケーブルが1本しか無い。日帰りの予定だったので、コンセントに差す充電器もない。見ればフロントで借りることができるという。フロントに行くと、「アンドロイド用のだけになりますが……」と、USB―USBtypeBのケーブルを貸してくれた。すばらしい充電器だ。

 

そしてシャワー使用のための手続きをする。女性店員さんに、シャワールームの鍵とタオルとドライヤーをもらう。なんか申し訳ない気持ちになった。夜22時に、からあげレストランのスタッフをしながら、ネカフェに泊まるような客相手にシャワーセットを手渡す。うーん。

 

とにかくシャワールームへ。カラオケの部屋の隣にあった。もらった鍵で南京錠を外す。ずっと閉ざされ続けている倉庫に踏み入るような気分だ。このシャワールーム、どのぐらいの頻度で使われているのだろうか? 使う人いるのか? あまり使われないとしたら、ちゃんと清潔に掃除されているのか? 

 

訝しみつつ入ったが、まあちゃんとしていた。多少窮屈だが、シャワールームとはそういうものだ。シャンプーやボディソープは置いてあった。持参の歯磨きセットで歯磨きもする。髪をちゃんと乾かし、ユニクロで買ったばかりのシャツを着て、水しぶきなどもできるだけ拭き、フロントの女性に使ったばかりのバスタオルを返却した。30分300円。安い。

 

その後は明日の予定を立てたり、上司にメールしたりして、すぐに寝た。でも全然寝付けなかった。ネカフェで寝るのは人生で2回目。この狭い空間で身体をどのように折りたたむか。寝返りも打てないし、空気は乾燥している。はっきり言って身体によくない。座椅子の置き方など試行錯誤しているうちに睡魔にいざなわれた。

 

朝、7時半。さっさと荷物をまとめて外へ。通勤のために駅に向かう人などが見える。金曜の朝、平日だ。夜は暗くて見えなかったのだが、このへんは阪急線の車庫があるみたいで、線路が幾重にも並行していた。西宮北口駅に向かい、駅前の「にしきた公園」へ。昨夜は来なかったが、こんな素朴な駅前風景もあるのか、と驚いた。

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ハルヒが腕を組みながらキョンを待っている……視えるぞ

 

 

公園というほどではないが、立派な聖地。検索すれば、アニメハルヒにおいても登場していることがわかる。さらに駅の前には、小さいながら飲み屋街があり、夜は賑わっているのだろうなということが想像できる。昨夜、この辺を歩かなかったことを軽く後悔する。

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聖地認定された、という告知ポスター。たしかに自分はハルヒの聖地に来たんだ、と気持ちが昂ぶる


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飲み屋街を抜けると川が流れており、酒場の喧騒と住宅街を隔てている

 

 

まず第1の目的地・「珈琲屋ドリーム」へ。8時開店と、スタンプ設置施設のなかで一番早い。

 

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みくるがお出迎え(?)

 

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ハルヒ推し。ここまでやってくれると一見のオタクも気兼ねなく入れる

 

入ってみると意外と小さい。アニメで出てきたあの喫茶店は、記憶ではもっと大きな店だったが……調べたら、一度移転してこの場所にあるらしい。常連らしきご老人が何人かすでにいた。モーニングを注文。700円ぐらいした。

 

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コーヒーが高く、フードは安い。おいしい

 

会計時にスタンプカードと、聖地巡礼マップを入手。

 

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この日は23日。フレンテ特別展は惜しくも逃した

 

このマップ、なかなか読み応えがある。なるほど、、エンドレスエイトは神回なのか、とか地元目線の紹介が読める。

 

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昨日行ったばかりの北高前坂道について、激しく共感する

 

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原作通りに言えば「しゃみせん」は「シャミセン」かな

 

次。アクタ西宮東館にある西宮市立北口図書館へ。9時開館。

 

入り口には夏休みと思しき小学生など地元の人たち多数が行列をなしている。最後尾に並び1分後ぐらいに開館した。建物の最上階にあることもあり、窓からの景色は壮麗だ。六甲山が連ねる峰々の稜線もはっきり見える。入道雲。高さの低い住宅街。

 

夏……なんか感傷的になる風景だった。いまごろ東京のオフィスでは、まあまだ業務は開始されてないんだろうけれど、みな仕事の準備をしている。そんななか、僕は地方の図書館に来て山を眺めている。これが僕の夏休みだ。そう感じた。カウンター脇でスタンプを回収し、早々に図書館をあとにする。

 

次。阪神香櫨園駅近くの、西宮中央図書館。9時半開館。

 

阪急神戸線に乗り、夙川駅へ。そこから夙川沿いをひたすら歩く。少し小雨が降っていたこともあり、すさまじい湿度に。じっとりとした空気がまとわりつくなか、駅前の信号をまつ。暑い……一瞬でシャツに汗じみができる。青。制服を着た小学生とすれ違いながら、早歩きで歩を進める。革靴で歩くのは疲れる。川岸の砂利道を革靴で歩くもんではない。砂利が靴に入って痛い。ひたすら歩く。

 

香櫨園駅を過ぎ、やっと図書館につく。20分ぐらい歩いただろうか。図書館ですぐスタンプを押印。ちょっと中を眺める。高さの低い本棚が並んでいる。メインの利用者は小学生か高齢者。どこの図書館もそんなもんだ。ここは憂鬱やら消失やらで長門とキョンが行った図書館のモデルになっている、と思う。入り口付近のソファスペースに見覚えがある。昔アニメで見た記憶が呼び覚まされて興奮してしまい、「長門……長門……」とつぶやく不審人物になってしまった。

 

次。西宮駅付近にあるフレンテ西宮。10時開館。

 

中央図書館から、JR東海道・山陽本線さくら夙川駅まで歩く。建石筋をひたすら北上。長い。暑い。

 

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東京タワーのようなものを建てようとして、途中で力尽きたみたいな塔

 

途中で雨が降り始めたので、折りたたみ傘を展開。雷まで聞こえてくる。さくら夙川駅に到達。鉄道オタクの人たちが電車を撮っているのを横目に電車を待つ。電車に乗り、JR西宮駅に。目の前にフレンテホールがある。スタンプは5階フレンテホールにある。なんかハルヒのポスターとかいろいろ販売しているようだったが、雨で疲弊し、じっくり見る余裕なし。係の人にスタンプをもらって、足早に建物から出た。

 

次、西宮北口に戻り、アクタ西宮西館4階のジュンク堂書店。10時開店。

 

西宮駅から西宮北口まで徒歩で行こうと考えていたのだが、この雨だし、足も疲労している。やむをえずタクシーに乗る。そういえば西宮駅には、このJR西宮駅のほかに阪神本線西宮駅もあり、マップで見る限りそちらの方が栄えているようだ。街歩きできなかったのが残念だ。

 

仕事のメールチェックなどしているうち西宮北口に到着。ジュンク堂書店へ。ハルヒコーナーが設けられていた。茅原実里さんが来たことがあるらしい。写真が飾ってあったが、ネットへのUP禁止。こういうのを見られるのが聖地の楽しみだ。と、そこで、昨日行ったブックファースト阪急西宮ガーデンズ店でハルヒの売り場をチェックしていない事に思い至った。やるせない。入口付近のスタンプを押印して立ち去る。

 

次。阪急本線甲子園駅最寄りの鳴尾図書館。9時半開館。

 

西宮北口駅から、阪急今津線今津行きに乗り、今津駅へ。途中停車駅は阪神国道駅のみ。今津駅で阪急本線尼崎行きに乗り換える。電車をまつ。あと少しだ……疲れていた。奇しくもこの日の前日、甲子園の決勝が行われたばかりだった。もし1日でも早かったら、人が多くてスタンプラリーどころではなかったかもしれない。

 

甲子園駅で下車。アドレナリンを分泌しながら図書館まで歩く。甲子園球場が見える。でかいなあ。図書館到着。ちいさなところだ。カウンターの隣で押印。ある高校生が聖地巡礼について研究しているらしく、アンケート協力のカードが隣に置かれていた。これでスタンプは制覇。景品交換所はこの隣、ららぽーと甲子園にある。

 

最後。ららぽーと甲子園、クリエートにしのみや。10時開店。

 

ぐるっと回って入り口から入る。ららぽ。西宮ガーデンズほどではないにせよ、大きいモールだ。入ってずんずん進んで、横道に入ると小部屋がある。そこがクリエートにしのみやだった。スタッフの方にスタンプを押してもらい、カードをもらう。達成した。僕はやり遂げた。感無量だった。スタッフの方と話をしたりした。こういうスペースによくあるファンノートに、恐れながら書き込みをした。こういう経験は初めてだ。楽しい。

 

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最後のスタンプ。ハルヒism.

 

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カード。名刺サイズ。キラカードはうれしい


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みくるのシルエットが妙になまめかしい

 

 


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左のPCには、例のスクリプトが表示される。右にあるでかいスポンジ状のエンターキーを押すことができる


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楽しかった。ハルヒについてこうして思いを馳せることができてよかった。最高の夏の思い出になった。このあと、がんばって新幹線に乗って帰京した。会社に行って、上司に甲子園のおみやげを渡した。でもハルヒの聖地を回ったということは話さなかった。あんまり突っ込んで聞かれなかったからだ(後日、酒の席で白状したが)。

 

ほんとうにいい思い出になった。ちゃんとカメラを持ってきてたくさん撮影しておけば、とも思ったが、出張のついでに、翌日の仕事をさぼったという背徳感もスパイスになっていたと思う。すばらしいひと夏の旅だった。最後に、先日の放火で亡くなられた京都アニメーションの方々に哀悼の意を表します。皆さんの労作がなければ、今の僕は存在していません。