今日は麻生副総理による例の発言に対する反応から見ていきます。
産経ニュース「麻生副総理「ナチス憲法発言」撤回に寄せたコメント全文」→http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130801/stt13080114060009-n1.htm
要は喧噪にまぎれて政治が進んでしまう悪しき例としてナチスを挙げた、ということです。また、麻生さんは「ナチスを否定的にとらえていることは。私の発言から明らかである。」と言っています。
これはまったくその通りだと思います。確かに全文を読む限り、麻生さんはナチスの手法(手口)に批判的だと思われます。でも、昨日取り上げたナチス発言のところは、昨日書いた通り、どう考えてもナチスを肯定しているとしか考えられません。では、いったいこの矛盾はどう説明すればよいのか。僕はニコニコ大百科の記事→http://dic.nicovideo.jp/a/%E9%BA%BB%E7%94%9F%E5%A4%AA%E9%83%8E%E3%83%8A%E3%83%81%E3%82%B9%E7%99%BA%E8%A8%80 に貼ってあった、シンポジウムの実際の音声動画を見てみました。↓
例の発言の後、会場は笑いに包まれています。手を叩いて笑いを表現する人がいることも聞き取れます。つまりこれは、観客がナチス発言を皮肉・ブラックジョークとして捉えていることを示しています。これには反論の余地がありません。つまりこの「麻生太郎ナチス発言」、このようになります:
「麻生さんは「あの手口学んだらどうかね。」とナチスの手法(手口)を肯定するという、およそ一般常識に反する見解――すなわちジョーク――をシンポジウムで言った。ところがマスコミはこれをジョークと捉えることはせず、麻生さんが本気でナチスを賛美しているといって批判した」
麻生さんは先の撤回コメントでは「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。」と述べていますが、実際シンポジウムではブラックジョークとして誤解されていました。
ちなみにこれは麻生擁護派&麻生さん本人の主張とは一致していません。彼らは、麻生さんはジョークを言ったのではなく、あくまでナチスを反面教師として学ぶと言ったのである、と主張しています。
ここまで書きましたが、僕はジョークが誤解されただけだからといって、麻生さんに何の否もないとは全く思いません。これは、明確に失言であったと思います。なぜかというと、ナチスのことを例えジョークであっても(ジョークではないようですが)誤解されるような例示をすることは、国際的見地で言えば非常識だからです。
ドイツやオーストリア等においてナチスを象徴するような表現を行うことは厳しく取り締まられるというのは、一般に知られています。調べたところ、ドイツには「民衆扇動罪」というのがあり、これがナチス政権の失敗に明確に言及しているそうです。これを意識していなかったあの発言は、脇が甘かった、と僕は考えます。
ここはドイツではなく、日本です。しかし、そういった形で問題を矮小化してしまっていいんでしょうか。麻生さんは日本政府の要職で、責任は重い。そのような立場の人が、誤解を生みかねない発言をしてしまうことは対外関係にも影響を与えるでしょう。
ところでここまで書いたところでインターネットの海に潜っていると、僕とだいたい同じことを考えてる人がいました。↓
これと、togetter:有田芳生「公然とナチスの暴力支配を賛美した麻生はドイツなら民衆扇動罪」→ http://togetter.com/li/542673
だいたい同じでした。だいたい。
とにかく、僕が言いたかったのは、麻生さんの発言は良くなかったという事です。
最後に荻上さんの言葉を借ります。「でもまあナチスに関してこうしたことを言うと国際的にはどうなるかと言うのは、予想はつくと思いますけれど」
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