研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

理由のある悪ってダークナイトにくらべてシンプルすぎないですか? 「ジョーカー」感想

"You don't listen, do you?"

 

地下鉄でエリートを殺害して、それが支持される展開でおおってなった。最後の、車の上で口裂けメイクを施して群衆から喝采を浴びるシーンなどもアツい。KKOの反逆。
弱者によるエスタブリッシュへの反乱を描いているのだ、ということがまず第一にある。ついにトップ1%が富全体の3割を保有するようなったアメリカ社会の分断を示すという意味で、(舞台は現代ではないにせよ)とても現代的だと思う。それはよいと思う。そのうえで思ったのは、今回のジョーカーは原因と結果がかなりはっきりした設定だな、ということだった。今回、彼が会話のなかで突然笑いだすのには理由がある。驚くべきことに器質的な病気のせいなのだという。「だから」、彼は弱者で虐げられていて生きづらさを抱えている(もちろん理由はそれだけではないが)。こういう言い方が正しいのかわからないが、プアホワイトのためのおとぎ話という感じはした。しかしだからこそ売れているのだし、金獅子賞とかもとっているのだろうと思う。けれどもダークナイトで描ききったジョーカーの姿とくらべると、いささか弱いような……。その感覚の根底にはたぶん、「格差や貧困があるからジョーカーが生まれるんだ!」→「格差や貧困をなくせば社会はよくなるんだ!」というメッセージのいかがわしさに対する視線が潜んでいる。いくら社会が豊かになりバットマンのようなヒーローがいても混乱を望むものは消えない、というのがダークナイトでいってたことだとすれば、「ジョーカー」はその2、3世紀前の話をしているような気がした。
しかし繰り返すように、時代がこういうヒールを求めていることを察知し、多少戯画的であれ、ジョーカーというブランドを活かし、ダークなDC映画を完成させた努力には敬意を払いたい、というのが感想でした。