法条遥『リライト』(ハヤカワ文庫、2013年)を読了。
タイムパラドクスを主題にしてるSFのような青春のようなホラーのような小説でした。
何度本をぶん投げようと思ったことか。
文章が拙いんですよ。誰が、何処でなにをしているのかがよくわからないんです。「状況説明力」とでも言いましょうか、それが足りない。*1これは小説としては致命的ですよ。感想を持つもなにも、「分からない」んですから。よく我慢して最後の方まで読んだなあ、と自分にエールを送りたいです。*2
感想ですけど、まあー複雑なプロットを作ったなあ、という感じです。でも複雑すぎて、読者に説明するのがかなり難しかったという印象を受けます。一応、全体の流れとラストシーンも理解できたのですが、説明不可能なところも散見されました。*3
また、1992年の方で主人公Xが入れ替わりしているのには辟易しました。せめて口調を変えるとかして、明確にしてほしかったです。まあ、その入れ替わりに意図的に気づかせないように狙っていたのかもしれませんが。
総括すると、ラストシーンはおもしろかったけどそこまで到達するのがめんどくさいです。したがって続編の『リビジョン』は恐らく買いません。
なんかdisってばかりですけど、解説の佐々木敦さんは、その「不可解さ」が法条遥の魅力なのだと言っています。
「読者はこの小説によって、頭と体を思い切り蹂躙されるのである。(p,290)」とありますが、それはホントに照準の合った批評だと思いました。いい意味で。
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/12/25
- メディア: 文庫
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*1:そもそも一人称と三人称を入り交じらせるのはやめてほしい。
*2:かつて、森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫、2008年)を、「明石さんの一人称が気に入らない」という理由で途中で読むのを諦めたことがありました。今も50ページあたりに栞を挟んだまま本棚に置いてあります。
*3:偉そうなこと言ってないでちゃんと指摘しないとですね……
・保彦+Xが旧館崩壊に巻き込まれたとき、なんでXは皆10年後にタイムリープしたんだろうか。保彦に洗脳されていたってことかな。ちなみに「タイムリープ」っていうと時間を繰り返しているイメージがあるので、僕は「タイムトラベル」って言いたいんですけど、この本では「タイムリープ」で統一されてました。
・2002年の方(美雪視点)で何度か歴史がリライトされているけれども、その発生条件がよくわからない。それでいて何で美雪の記憶は上書きされていないのか。
・カラオケボックスで茂が「時間の強制力」とやらに導かれてノンストロークで喋るのがよくわからない。ホラーっぽさを演出するために無理矢理付け足した感じがするし、その演出の所為で肝心のパラドクスの説明が理解しづらかったような。
・結局美雪が『時を翔る少女』を執筆した理由が不明。友恵の部屋で読んだのは分かったけれど、それじゃあ無限ループになってしまう。作中では「時空のミラクル」と表現されていたけども、腑に落ちないんだよなあそういうの……