- 作者: 荻上チキ
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/05/17
- メディア: 新書
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僕はこの本に、「なぜデマは発生するのか」という、理由の研究を期待していました。
でもそれは書かれていませんでした。
というか、序章の14ページにはこんなことまで書かれています。
(前略)流言やデマが広がってしまうとき、多くの人は「なぜそんなウソをつく人がいるんだ」と、個人の「意図」を問題にします。しかし、流言やデマが広がるのは、それを信じた人・広げた人が多くいるからです。ですから、それを信じてしまう集団的な心理や情報環境にこそ注目すべきで、創作者・発信者の「意図」をあまり重要視する必要を感じないからです。
つまり「なぜデマは発生するのか」を考える必要は無いと言っています。
「おいおいマジかよ! そこに期待してたのによ!」
……って思ったんですけど、読み終わったら
「コレ良著だわ」
って思いました。
皆さんも記憶に新しいと思いますが、
「コスモ石油の黒い雨事件」
や
「イソジン飲んで放射能予防事件」
などをこの本では取り上げ、これらのデマに引っかからないためにどうすべきかを論じています。
今でこそ「なんて嘘くさい言説なんだ」と思うこれらのデマですが、当時高校一年生だった僕は、幾つかのデマをツイッターでリツイートしてました。
思えばあの時は震災躁状態で、危機感を煽るようなツイートは見境なくリツイートしてたような気がします。
「【拡散希望】○○県○○市の○○学校で避難している学生が津波で孤立しているようです!ただちに救助するよう支援をお願いします!」
……など。
でも確かに、この本にも書いてありますが、
「それ、なんでツイッターで拡散させてんの?」
という一抹の疑問は持っていました。
ツイッターじゃなくて、警察とかに連絡した方がいいじゃん、と*1。
「ツイッターではいろいろな情報が出回っていますが、ラジオではちゃんと確認が取れた情報しかお伝えすることはできません」
普段ツイッターを活用しまくってるよっぴー(ニックネーム)ですが、僕みたいにいろんな情報をリツイートすることはしてませんでした。メディアの人間としての役割を果たしていたのはさすがだなあと。
で、やっぱり僕たちはよっぴーの姿勢に学んでいかなくてはいけないのですよ。「メディアの人間だから情報に慎重になり過ぎている」とかではなくて、この本にたくさん取り上げられているデマの数々、その幾つかは実際に僕も信じていた物でした。だから僕たちも確認の取れない情報を不用意に拡散してしまうことは避けなければならないと思います。
特に東日本大震災は一般人がツイッターという「拡散ツール」を手に入れて初めての災害でした。多くの弊害も見られました。だから、次は同じような失敗をしてはいけない。
そのために過去の事例を知っておくことは、今後の災害時の対応を考えるきっかけになると思うし、著者も序章でそう書いてます。
というわけでこの本おすすめです。
*1:そういえば災害時に救援を求める時って、どこに電話すればいいんでしょうか。こういうのって政府が周知させとかないといけないんじゃないですかね。