研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

『シン・ゴジラ』の感想

まず前提

庵野秀明の作品はエヴァのTV版と旧劇場版のみ鑑賞済み

ゴジラは「ファイナルウォーズ」と「GODZILLA」のみ鑑賞済み

 

この感想を書く意義

・『シン・ゴジラ』を観に行っていろいろ感じたものの、一人で観に行ったためにそれを誰とも共有できずにもったいなさを感じているため

・もし自分のような人がいたらこれを読んで感じたことを共有できればいいなと思ったため

 

本編

・まず最初、東宝の今のロゴが出た後に昔の東宝のロゴが出る

 ・なぜかそこで笑う観客数名

・画面下に現在地名とか人名が次々と出るのがエヴァっぽい

・内閣官邸のやりとりがリアルっぽい。大臣が会議で発言してる時に官僚からメモ書きを渡されたり

 ・しかもそのメモに書かれているのは、ちょっとニュアンスに含みを持たせて主張を曖昧にするためだけの些末な文章表現の訂正だったりする

東京湾の水蒸気噴出事件の騒動の模様を、現場にいる一般人がスマホでニコ生中継するシーンがある

 ・映画『クロニクル』の「モキュメンタリー」という手法を思い出した

 ・それにしても撮影者たち、棒読みであまりに緊迫感がない

・主人公「超巨大不明生物の可能性があります」

大臣「超巨大不明生物なんてありえん!」→直後に超巨大不明生物の姿をクローズアップで写す演出が面白い

 ・全体を通して内閣官邸の出来事は真面目だけどコメディ風に描かれている

・「生物学の有識者を呼びましょう!」ということで有識者らしき3名を呼び、話を聞く

 ・3人共「もっとよく見ないと分かりません」

 ・一人発言するごとに、それを聞いている大臣が苛立ちながら膝に拳をコンコン当てる様子がクローズアップで写されるのが面白い

・結局巨大生物は上陸しないし、したとしても自重に耐え切れず絶命するという結論に至る

 ・内閣総理大臣「よし。防災服と原稿を用意してくれ」

 ・こういう時は防災服を来て記者会見に望むのだ、一応ね、意味ないんだけどね、そういうポーズも大事だからね、という姿勢が窺える

 ・案の定記者会見中に巨大生物が上陸。笑

・巨大生物は手足がなく腹で蛇行する太った蛇みたいなやつだった。イメージとしてはツチノコ

 ・顔面がグロい。目玉が剥き出し。ちょうど保健の教科書にある、筋肉だけの人体図みたいな感じ

 ・しかも頭部から腹部にかけての所がなんかセミの腹みたいになっててそこから血液的なものがドロドロ流れ出てくる。キモい

 ・こいつを倒すためにゴジラが海からやって来るのか……?

 ・と思ったら巨大生物が移動を停止し、形態変化する。前足が生え、背びれが生える。なんとこいつこそがゴジラだったのだ。でもまだ完全体じゃない

自衛隊がヘリを出してゴジラを撃とうとする

 ・BGMがエヴァっぽい……ていうか完全に初号機発進時のBGMのイントロを無限ループしたやつだ!

 ・ヘリのパイロット「射撃準備完了、射撃許可を!」

  自衛隊現地部隊「射撃準備完了、射撃許可を!」

  自衛隊本部「射撃準備完了、射撃許可を!」

  防衛大臣「射撃準備完了、射撃許可を!」

  首相「……許可します」

  防衛大臣「射撃許可!」

  自衛隊本部「射撃許可!」

  自衛隊現地部隊「射撃許可!」

  ヘリのパイロット「射撃! ……民間人がいます!」

  自衛隊現地部隊「民間人がいる模様!」

  自衛隊本部「民間人がいる模様!」

  防衛大臣「民間人がいる模様!」

  首相「民間人に銃は向けられません。射撃中止!」

  防衛大臣「射撃中止!」

  自衛隊本部「射撃中止!」

  自衛隊現地部隊「射撃中止!」

  ヘリのパイロット「射撃中止!」

 ・命令系統がとても冗長

 ・でもそれをめちゃくちゃテンポよくカットしているのがまた面白い。この映画は全体を通してテンポが良い。だからのろまな内閣官邸の様子も面白く見れる

 ・緊急時にこんなんで大丈夫か、これじゃあ緊急事態条項の憲法改正も必要かもしれんな、とか思った

 ・しかしそうして全権委任的なことをした結果が先の大戦なのだろう。主人公の「希望的観測のせいで先の大戦では300万人の国民の命が失われた。根拠の無い楽観は禁物です」という言葉が印象に残っている

・結局巨大生物は海に帰る。その後のいろんなニュース番組の音声がオーバーラップしながら「何もなかったかのような日常」の映像が淡々と流れていく。ランドセルを背負った子どもたちが元気に登校したりとか

 ・当然「ああよかったね」なんて気持ちで見れるわけがない。嵐の前の静けさ

石原さとみ、とても綺麗。予告で初めて見た時、おれは小西真奈美かと思った(髪型で)

 ・ただちょっとルー語っぽい……?

・主人公が立ち上げた対策本部、ひねくれものだけど頭はキレる天才集団感があってなんともいえずよい。みんなキャラが立ってる

 ・特に理化学研究所の研究員を演じた高橋一生がいい。女の専門家が「やっぱり核分裂だったじゃないですか」って言った後の「ごめんなさい」で観客一同笑

 ・といったところで、「未曾有の災害」「指揮系統の混乱」「放射性物質の拡散」ということでゴジラが完全に311のメタファーであることが観客に明らかになる

高良健吾が「みんな家庭もあるのに不眠不休で研究してくれる。すばらしいです」って言った時におれも「ああ、すばらしいなあ」って思いそうになったけど、こういう結果じゃなくて過程を尊ぶ思考ほど危険なものはないなと思った

ゴジラ、鎌倉に再上陸。デカイ。一足一足の重みが違う。我々が知っているゴジラのフォルムになっている

 ・自衛隊がヘリの機銃とタンクのミサイルでゴジラを撃ちまくるが傷一つつかない。硬い。この第4形態に移行する前だったら効いていたかもしれない、と思う

 ・人類を超越している。名前にGODを有するものだけのことはある

・鎌倉から首都に向かってくる。東京の大田区・品川区を通過し北上。中央区・丸の内〜東京駅付近に陣取る。時は既に夜

 ・在日米軍が出撃してゴジラに貫通弾を打ち込む。けっこう効いてる。さすが米軍……?

 ・悶絶するゴジラ。背びれから尻尾にかけての部分が青白く発光し始める

 ・観客の中で「いよいよか……」という期待が高まる

 ・ゴジラの口が3つに割れて地面に毒ガス的な何かをものすごい勢いで吐き出す

 ・ここが本作のハイライト。炎を吐き出したかと思えば、レーザービームのような細い光線を吐き出す。目の前の高層建造物は全て焼き切られる。そのまま顔を上に向け、アメリカの空軍機を撃墜

 ・アメリカ、更に空軍機を派遣。爆撃。それに対しゴジラ、背びれから無数の光線を放出。全て撃墜される

 ・ゴジラ、そのまま背中の光線を発しつつ口の光線で360度全方位を焼ききっていく。銀座や浜松町などのビルが一瞬にして破壊されていく

 ・どう考えても勝てない。チートキャラだろ

 ・東京で育ってきた僕としては街が蹂躙されていくさまは見ていて胸が痛くなった。なんか悲しかった。人類はこの脅威にどうすることもできないんじゃないか

……と思った

 ・この、ゴジラが闇夜に暴れまわる時のBGMもすごく悲壮感があった

 ・首相と閣僚たちがヘリで逃げようとした途端にレーザーで貫かれたのも怖かった

 ・地下鉄や地下街に逃げる都民を見て思ったけど、こういうパニック映画って災害に対応する人間を描いたものと災害から逃げる一般人を描いたものがあって、本作は前者なんだけど、後者に該当するもので「東京マグニチュード8.0」を思い出した。あれは批判多いけど僕はわりと好きだったんですよ

ゴジラ活動停止。周辺は火の海。気仙沼を想起する

 ・これは核分裂を行ったあとの冷却行動、ということらしい

・首相の後釜に入った大臣(平泉成)がおもしろい。完全に傀儡。流れで国連安保理決議された多国籍軍の核攻撃によるゴジラ殲滅作戦を承認しちゃったりするし

 ・それはやばいですよ……と官僚もいうが、やむをえないということに。都民360万人を緊急疎開することに。

 ・都民って1200万人ぐらいいたはずだから、360万人というのはどうなんだろう……先のゴジラの被害で沢山死んじゃったということなのか? 死に過ぎでは?

長谷川博己石原さとみが崩壊したモノレールの横で多国籍軍の核攻撃について話す。徐々にカメラが引いていき、二人は隅に小さくなっていく。このカメラワークもいい。

 ・しかしそのあと原爆ドームの写真を写すのはいささかショッキングすぎというか、問題提起しすぎではないか……?

 ・ていうか『シン・ゴジラ』は全体を通してカメラワークがかっこいい。なんだろう、カメラワークだけで魅せるってすごいことだと思う

 ・たとえば会議室の設営のシーンで、キャスター付き椅子を動かす様子を、椅子の上にカメラを置いて撮影したりする。こういうちょっと不思議な視点を入れつつも、違和感がない。むしろ普通に俯瞰で撮る以上に臨場感が伝わってくる

 ・首都で自衛隊が戦闘行為を行うということで、どうしても昨年の押井守の『首都決戦』と比べてしまう。押井は押井で好きなんだけど、庵野秀明のカメラワークはそれ以上に好きだな

・主人公は多国籍軍の核攻撃の前に研究チームでゴジラ凍結作戦を遂行することに。

 ・作戦名をあれこれ考えたりするところがリアルっぽい。「『ゴジラ凍結作戦』じゃ子供っぽいな」とか

 ・これがエヴァだったらリーダーが「ヤシマ作戦よ」とかいってバシッと決まるんだろうけど。現実の日本/フィクションの日本、トップダウン/現場判断、あやふやな作戦名/バシッとした作戦名、ゴジラ/エヴァ、という対比かな

高橋一生がラップトップを持ってゴジラの細胞膜の分析結果をみんなに見せるシーンが凄く良かった。ラップトップの画面の裏側から図像を透過させてラップトップを覗き込む人々を写すという手法。アニメ「ちはやふる」とかにもあったやつ

・そろそろ書くの疲れてきた

ゴジラ凍結作戦開始。正式な作戦名は忘れた。「オリガミ作戦」とかそんな感じだった気がする

 ・陽動攻撃開始! とか言うからなんだろうと思ったら無人新幹線に爆弾を積んでゴジラにぶつけるとかいうやつで笑った

 ・さらにビルを倒壊させて弱らせる。機銃もミサイルも効かないのにそんなの効果あるのかよ……と思ったらわりと効いていた

 ・そして「無人在来線爆弾」とかいうテロップが下に出て、中央線山手線総武線その他がゴジラに向かって突撃するシーンでまた笑った。人類は追いつめられるとこんなことするんだな……と思った。ていうか人類追いつめられすぎだろ

 ・で、ゴジラの口に液体窒素のどスプレーみたいなのを注入して、やっとゴジラの体内がマイナス196度に低下し、完全に沈黙

・エピローグで石原さとみが「日本の首相はあなたで大統領はあたし」みたいなことを言うのがなんともいえずよい。

・おなじみのゴジラのテーマが流れ、エンディング

・おわり

・観客数名が拍手。製作者が居ないところで拍手したって意味ないでしょ……とはいえ気持ちはわかる。拍手したいぐらいいい映画だったから

・ちなみに24時新宿歌舞伎町トーホ-シネマズで見たのだが、ほぼ満員

 

見終わった後

・日本でもこんなスペクタクルの映画を作れるんだな、と素直に感心した。昨年『首都決戦』を見た時はやっぱりハリウッドには叶わないと思ったので。やはり特撮映画の伝統にあるゴジラはすばらしい

 ・その一方で、日本でスペクタクル映画を作るには、どうしても「首都(東京)」VS「それを蹂躙する敵」という構図にしないといけないのだなと思った。そのように想像力が規定されてしまうということ自体が、我々が未だにあの戦争に囚われ続けていることを意味しているように思う

・「戦後は続くよいつまでも」