研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

【コロナでも休まず】保育園は高卒ママを助ける 経済学が明らかにした効能とは

コロナウイルスの影響で、安倍政権が全国の小中高に休校を要請しましたね。

他方、幼稚園、保育園などの幼児施設には要請しないようです。

 

新型肺炎、保育園と学童は休みません 厚労省通知へ:朝日新聞デジタル

【2/27 速報】コロナウィルス関連 認可保育所・幼稚園・認定こども園は一斉休校の対象外に(猪熊弘子) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

僕の職場の、子育て中の上司も来週から大変だと言っていました。

共働き家庭なので誰が子供の面倒を見るんだと。10歳ぐらいなら、まあ、一人で家にいてもいいのかもしれませんが、小さい子だと心配です。一応弊社ではやっとこさリモートワークが認められたので、上司もそれを活用するようです。とはいえリモートワークは「小さい子供がいてやむを得ない事情がある場合にのみ紙に事情を書いて所属部長に提出すること」というひどい規定があるのですが……

ともかくそれで上司やら周りの人が話しているのを聞いていたのですが、どうやら彼らが気にしていることの一つに、「教育の遅滞」があるようなのですね。

つまり、休校で授業が受けられないと勉強ができない。塾で勉強している子ならいいけど、そうでなければ休校中は「空白期間」になってしまう。中学校受験とか考えているのならなおさら気になるところなんでしょう。僕は独身で子どももいないので、「なるほどそういう視点があるか」と思いました。

 

小学校ではないのですが、保育園に子どもを通わせることがどのような意味を持つのか、という研究を紹介した本を読んだのでメモしておきます。

山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』の第5章「保育園の経済学」です。

 

 

厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」をもとに分析を行っているのですが、それによれば、保育園に子どもを通わせると、①子どもの多動性と攻撃性が下がり②母親のしつけの質と幸福度が上がり、子育てストレスが下がるというのです。

 

ただし母親が高卒の場合に限る、という点に注意が必要です。四大卒の場合、そんなに効果はありません。これはちょっとおもしろいですね。逆にいえば親が四大卒の場合、べつに保育園に子どもを通わせなくても、子どもの多動性や攻撃性、母親のしつけの質や幸福度、子育てストレスにはそんなに変りないということですね。しかしすっ飛ばしましたが、子どもの言語発達については、親の学歴関係なく、保育園通いが子どもにプラスに寄与するようです。

 

で、なぜ高卒の場合に限り、上記のような好ましい効能が得られるのか。いろいろあると思いますが、まずは「保育園の育て方が良いから」というのはあるでしょう。だから保育園に通わない高卒家庭よりも、保育園に通う高卒家庭の方が、子どもの多動性と攻撃性が下がる。

そして保育園に子供を通わせることで、母親の自由な時間が生まれます。当然子育てストレスは下がるでしょう。また余暇が増えるだけでなく、働きに出てお金を稼ぐこともできるため、幸福度が上がることも予想されます。子育てストレスが下がり幸福度が上がれば、しつけの質も向上するのかもしれません。

 

で、筆者はこの研究結果から、「幼児教育無償化よりも待機児童解消に予算を割くべきだ」と主張しています。というのも、上記の幼児教育の効能が、長期的には犯罪率の減少など、社会的コストの削減につながるということが教育経済学では明らかになっているからです。つまり、幼児教育をおこなうことは、社会全体にとって得である。であれば、限られた一部の家庭に無償化の恩恵を与えるよりは、まずは供給を増やすべきだし、そのためのコストは社会全体で負担すべきである。というわけです。

 

翻って現実の話ですが、いくら保育園が大事とはいえ、小中高が休校になってしまっては、小さな小学生のお子さんのいる保育士さんはどうするんだという問題が起きるかと思います。自分の子どもは学校が休みで家にいなきゃいけない一方で、自分は保育園でべつの子どもたちを見なきゃいけないわけですよね。こうした悪夢がもう週明けには現実になろうとしているわけですが、そうならないためにも、まずは供給から増やしていくべきだと思いました。無償化よりも先に。