研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

【最果て】無人駅から日本最東端の街へ 北海道旅行②釧路→厚岸→根室編

帯広で豚丼を食べて釧路でカレーを食べた1日目を終え、北海道周遊の2日目。釧路から根室本線(通称花咲線)を利用して牡蠣で有名な厚岸で下車し、夜には根室をめざす。北海道における「電車で一本」の大変さを、まだこの時までは知らなかった。

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たった1両の列車 

 

東横インで目覚める。朝食はバイキングではなく、弁当を配られた。部屋で味気ない弁当を食べ、釧路川にまで歩く。

 

観光客らしき人はちらほらいるが、地元の人がいるのかどうかさっぱりわからない。朝9時ごろ。釧路市長選があるらしく、選挙カーが走る。立候補者の名前が幾度も叫ばれる。が、市民はどこにいるのか?

 

釧路川にある港には漁船がたくさん乗り付けている。見上げれば空は広い。だがなぜだろう、別に釧路にしかない風景には見えない、と思ってしまう。そんな冷めた気持ちで歩いていた。

 

というわけで、おいしいものを食べに行く。「フィッシャーマンズワーフ」という、漁港のすぐそばにある市場だ。ここで「さんまんま」を買う。

 

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「写真OK!」

 

外のベンチに出て開けた。ちょうど日差しが出てイイ感じにあったかかったな。さんまの蒲焼きが乗ったごはん。タレがうまい! 温かい! 今が旬ゆえか、脂のノリがいい。

 

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中に入っている紫蘇だか大葉だかが大変すばらしいアクセントになっている

 

朝ごはんはこれで決まりだな。ただ、720円となかなか高い。

満足したので、釧路駅までのんびり歩く。


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「キッチンBoo」 \ブー/ "キッチンブー"


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こちらこそ

 

今日は釧路から北上して日本最東端の市・根室を訪ねる。根室本線、通称・花咲線を使っていくのだが、途中、牡蠣で有名な漁港の街・厚岸(あっけし)で降りる予定。

 

時刻表によれば「快速ノサップ」が朝に走っている。どんな列車なのかなとワクワクしていたらなんと「一両編成」の気動車だった。ほんとにこれで合ってるのかなとかなりびっくりした。ホームの向かいでは「釧路湿原ノロッコ号」が止まっており、発車に合わせて駅員のお姉さんが旗を振っていた。

 

快速ノサップが動き出す。結構車内に人は多い。ロングシートで眠っていたら、いつの間にか厚岸に着いた。50分ぐらいか。駅には、自動改札がなかった。

 

牡蠣以外何にもない街で

孤独に電車を待つ

駅を出てもなんにもない。店らしきものはあるが、営業していない。とりあえずグーグルマップを見て、人がいそうなところに行ってみる。近くに小さな山があり、そこにニュータウンがあるようだ。


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写真は撮れなかったけど、確かにここはニュータウンらしく、そこそこ大きな一軒家が立ち並んでいた。たまに人の姿も見かけたし、車もわりと通っていた。ここに暮らしている人はどんな人なのか、何をして暮らしているのか、厚岸で不便はないのか、なぜここに住むことを決めたのか、どんなことを楽しみに生きているのか、周囲の住人とのつながりはどのようなのか……

 

さまざまな疑問が去来したが、雄大な自然の中にいると、彼らがここを選んだ気持ちもわからんでもないような気がした。


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漁港の空は天に開かれている

 

昼飯どきなので、駅から徒歩5~6分程度のところにある「道の駅 コンキリエ」に行った。いろいろな牡蠣料理が食べられる。4階建てで展望室もある、代表的な観光施設だ。駐車場には車がたくさん止まっていて、建物も人でにぎわっていて驚かされた。おそらく厚岸でもっとも人の集まっている場所だろう。

 

しかし人が多すぎてレストランの入り口には「60分待ち」などと掲げられている。行列には並ばないというルールを自分に課しているので、退散。徒歩20分ぐらいのところにある市場・エーウロコまで歩いた。ここも観光施設の一つで、牡蠣を買ってその場で食べることができる。ただし、自分で剥かなければならない。


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5ピース買ってみた


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イートインコーナーにある電子レンジで蒸し牡蠣にした(市場の推奨する食べ方)

 

うん、おいしい。実は5ピース中1個は生で食べてみたのだが、剥くのが下手すぎたためか、妙な酸味を感じた。剥くのはかなり難儀した。周囲で家族やらカップルやらが「難しいね~」と言っているなか、一人、ナイフをゴリゴリやりながら格闘していた。いくら気まぐれクックを見ていても無意味。その点、レンチンしてしまえば殻は勝手に開くので食べやすい。

 

で、また駅まで向かった。どうせ急いでも、次の電車は約3時間後。のんびり行けばいい。しかしあまりにも寄り道するところがない。パン屋や焼き肉屋、床屋など、経済活動の痕跡は見られるのだが、どこも閉まっているし、なんなら「閉店しました。●年間のご愛顧ありがとうございました」といった張り紙も見え、悲しくなる。午後2時ごろ。こんなに明るいのにほぼ自分の足音しか聞こえない。

 

厚岸駅の待合室でスマホをいじる。居眠りして乗り過ごしたらシャレにならないので、それなりの緊張感がある。2時間半ぐらいだろうか、もう日も暮れ始め、足元が寒くなってきた。とっくに駅員さんは退勤し、無人駅と化していた。

 

厚岸駅には僕ともう一人の青年が電車を待っていたが、ふたりともどうすればいいのかわかっていなかった。よく見ると改札に「ご自由にお通り下さい」と書かれていた。列車が来るギリギリになってそれに気づき、ホームへ。

 

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ふりかえると青年がカメラを構えていた。急に前に出てきて撮影して、邪魔してしまったかと思うと本当に申し訳ない

 

車窓は間もなく真っ暗になり、何も見えない。スマホをいじったりするのだが、たまにネットがつながらなくなる。いま僕が向かっているのは「そういうところ」なのだと、襟を正した。

 

根室名物の謎のスタミナ飯

寒くて美しい街並みに感動

そして根室駅に到着……

 

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写真を撮る男性がいる。真っ暗でも撮らずにはいられない気持ちの昂りを共有する

 

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ここに来るまで全く意識していなかった。確かにここは地理的にそういう政治性を帯びた土地だった

 

しかし寒い! 地図を見ればわかるが、札幌と比べてもだいぶ北方だ。両手をポケットに入れながら、喫茶店「ニューモンブラン」に入店。駅から徒歩3分ぐらい。根室名物の料理「エスカロップ」発祥の店と言われている。


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エスカロップはあるのだが……「ビドックライス」?? (あと「弁当」という研ぎ澄まされたメニューに笑う)

 

あまりにもビドックライスに惹かれすぎて、思わず注文してしまった。「どういう料理なんですか?」とか聞かない。そのほうが楽しい。


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ケチャップライスにミートボール、これが「ビドックライス」だ!


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ミートボールなんてもんじゃない、「丸いハンバーグ」だ!


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「ホットオレンジ」は甘くて温かい


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静かな音楽が流れる店内。時間もゆっくり流れていきそう

 

朝はがっつり食べたものの、昼は牡蠣だけだったので空腹で、根室は寒くて、だからとてもおいしかった。この店だけで根室がだいぶ好きになった(しかしビドックライスの名前の由来ぐらい聞いときゃよかったな……)。

 

チェックインまであまり時間がない。下り坂を降り、繁華街っぽいところを抜けると、今日の宿があった。ゲストハウス・ネムロマン。


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去年できたばかりらしい


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ドミトリーなんて大学生の時以来だ

 

とてもいいオーナーさんで、GoToの電子クーポンがうまく発行できなかったら言ってくださいね、と優しくしてくれた。民家をリフォームして作ったようだけど、トイレやシャワールームは新しいもの。なお、ネムロマンについてはこういう記事もある。

 

Uターン村田さん開業 ゲストハウス「ネムロマン」【根室】 | 北海道ニュースリンク

 

とてもいい宿泊だったということを先に書いておく。

 

で、荷物を置いて、根室の夜を散策。しかし日曜日の夜。地元の人もあまり外には出ないだろう。どの店ももう閉まっていた。

 

でも街灯の明かりと、坂道と、実はすぐそばで海に接しているという立地、そして最東端の市という条件から、これまでどこの街でも感じたことのなかった解放感を覚えた。日本の端っこ。寒い。人口が少ない。でもこうして人が寄せ集まって、経済活動をしている。スナックが立ち並ぶ通りもある。そんなことになにか希望みたいなものを感じてしまった。

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写真が下手くそすぎる。肉眼で見た景色は本当に素晴らしかった

 

空は曇っていたのだが、実はニューモンブランからネムロマンに歩いている途中は晴れていて、見上げると星々がきらめいていてものすごく感動した。久しぶりに星空を見たからだ。もっと立ち止まりたかったけど、チェックインの時間が迫っていたので顔を前に向けた。

 

明日、根室→網走編。ありがとうございました。

 

【支出】
さんまんま 720円
釧路から厚岸 1130円→フリー
マルえもん(牡蠣) L×5ピース 580円
厚岸から根室 1890円→フリー
ニューモンブランでビドックとホットオレンジ 1420円
ネムロマン 3850円→GoTo適用で2502円

計5222円