厚岸で牡蠣を、根室で謎すぎる洋食を味わった北海道周遊の2日目。3日目の今回は本土最東端の地・納沙布(のさっぷ)岬を訪れたのち、釧路に戻り、釧網(せんもう)本線で網走をめざす。でも網走って、監獄以外にいったい何があるんですかーー
ヒントは「オホーツク」
ゲストハウス・ネムロマンで起床。シャワーを浴び、一階のリビングで朝食。オーナーさんが「いまみそ汁あっためてるんで座っててくださいね」。甘めの玉子焼きが美味しい朝ごはんだった。なんだろう、手作りの朝ごはんを北海道のゲストハウスで食べるという、この温かみのある体験……とても思い出に残った。
そしてチェックアウト。昨日は暗くてうまく撮れなかった、根室の街並み。月曜の朝。
根室駅近くのバスの営業所で往復チケットを購入。本土最東端の納沙布岬へ。
着いた。お土産屋がけっこうあることに驚いた。自販機でコーラを買い、飲みながら岬を歩いた。
行ってはじめて気づいたことだが、納沙布岬は北方領土問題についての啓発が盛んに行われていた。というか、返還運動の聖地としての位置づけ「でしかない」場所だった。「日本の最東端! 風情ある!」みたいなノリで楽しめる所ではない。そもそも政治的には「日本の最東端」というのは誤った理解で、「本土の最東端」というのか正しい。日本の最東端は択捉島とされているからだ。
北方四島に思いを馳せる意味で作られたという「四島(しま)の架け橋」
中央には大きなかがり火が燃えている
北方領土資料館というのもあり、入ってみた。戦前、ロシア侵攻前の四島の地図が貼ってあり、そこに「木村タエ」とか、いろいろな日本人の名前が書かれていた。あんな北方の寒そうなところに日本人が集まり、集落を形成していたのだ。
ほかにもいろいろ考えさせられた。ただこれについて書くと記事の趣旨を逸脱するので、やめておく。
JR随一の「不採算路線」
素晴らしい景色を一等席で堪能
バスで根室に帰り、花咲線で釧路に戻る。
昨日、厚岸まで花咲線に乗ったとき、車両の後ろ部分で立ってる人がいた。席はまだ空いているのに何をしているんだろうと思ったが、その理由が分かった。ここにいると景色がよく見えるのだ。
普通の客は席に座っている。大きな窓越しに、後ろに過ぎ去っていく景色を独り占め。
こんな景色が見える。途中、駅や踏切にカメラを構える人がいることも
日本最東端の駅・東根室駅。意外と周囲は民家が多い
列車は落ち葉を巻き上げながら進んでいる
釧路駅に到着。ちょうど昼時。網走行きの列車まで1時間ある。飯はどうしよう。
「勝手丼」で有名な和商市場(駅から徒歩1分)に行ったら、昨晩ゲットした地域共通クーポンの「電子版」が使えるところが全然なくて、がっかりした。まあ、店からしたら紙のほうが圧倒的にラクだよな……駅そばで天丼セットを食べて釧路を退散。
網走まで約3時間。釧網本線も花咲線と同じく一両編成。いずれもJR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区」と言っている路線だ。
しかし釧網本線、後ろのデッキから見える景色が素晴らしい! 有名な「釧路湿原」、意外と知られていない秘湯「川湯温泉」などを通過した後に見えるはオホーツク海。じつは花咲線に負けないぐらい景勝の列車なのだ。
あまりにもよかったのでiPhoneで動画を撮った。後日YouTubeにアップロードを試みるが、とにかく素晴らしかった。山の中の森をかき分けるようにして力強く走る列車……その単純な事実に感動した。実際一度乗ってみるべきだよ。廃線になる可能性もあるわけだし。
人気Youtuberの"聖地"へ
現地の人との心温まる対話
網走駅に到着。
二大ホテルが目の前に
だが宿はもう決めてある。Googleマップで名前を検索し、電話をかけてみる。6畳の部屋が空いているとのこと。もちろんOK。
最寄りのセブンイレブンに寄ってから(といっても駅から徒歩7,8分はするのだが)、宿へ歩く。真っ暗な夜道。
これがその宿だ!
外観撮ってなかったので部屋にある貼り紙を
民宿ランプ。鉄道系YouTuber・スーツ氏が幾度も宿泊し、そして動画(https://youtu.be/GKYIf6dksp4)でその素晴らしさを紹介した宿だ。
一泊2800円という破格の民宿。駅から最短ルートで徒歩5分ぐらい。プランは素泊まりのみだが、200円で「ランプパン」を購入することができる。
砂糖パンを凍らせたもの。一晩置いておけばいい具合に解凍される
前述の通り、コンビニに行くにはやや歩く必要がある。しかしこれがあれば、朝イチで行動を開始することができる。札幌行きの特急オホーツクが5時56分発という異常なタイムテーブルゆえ、これがかなり重宝するわけだ。
なお、部屋はこんな感じ。
6畳間
前述のスーツ氏が動画で紹介したのと同じ部屋だ。ランプのオーナーさん?女将さん?には大変よくしていただいた。リビングに入るやいなや「スーツさんの動画見てますか?」「ええ、そうなんです」「わあよかった! スーツさんと同じ部屋をとってますよ」「ええっ、そうなんですか!? 楽しみだなあ」。
他にも最近北海道の周遊きっぷを買って回ってきたとか、ご飯を食べるならあそこがいいとか、スーツさんの動画の反響についてなど、いろいろ教えてもらった。終始ニコニコしていてとてもいい方だった。網走、というかランプ、めちゃくちゃいいところだ! この方との心温まるやりとりこそが、実は網走でもっとも記憶に残る出来事だった。
荷物を部屋に置いて、フリーWi-Fiでスーツ氏の網走動画を見る。ふんふんなるほど、俺はいまここに泊まってるわけだ……まさに聖地巡礼。繁華街に歩いていくわけだが、その途中にある「第四種踏切」も動画に出てくる。
「危険!」「危ない!」などの警告が貼られまくっている
これは電車が来てもバーが下りず、サイレンも鳴らないという完全自己責任の横断踏切だ。夜間のためスマホのナイトモードで撮ったが、肉眼では何が書かれているかまでは見えない。
ちなみに帰りもこの道を通ったが、ちょうど列車が線路を通っていて、ただそれだけなのに興奮した。
で、Googleマップで評判の良さげな飲み屋に入る。「蒸汽船」。そういや今回の旅で初めて店で飲むな……
刺身盛り合わせ
南蛮豆腐。刻んだ唐辛子を何かに和えたものが乗っている
メニューに書いてある海鮮雑学を読みながら、カウンターでずっとビールを飲んでいた。「アッケシ」はアイヌ語で牡蠣を意味するらしい。厚岸は当て字なのか。なるほど。
締めとして「オホーツク丼」(2400円ぐらい)を注文してみた。
ってさっきの刺身盛り合わせと同じネタじゃん!
あ、ご飯の中に鮭はらこが入ってた
美味しいのだが、サザエの咀嚼が多すぎて顎が疲れたというのと、ハイペースでビールを飲み続けていたので炭酸で腹が膨れている。腹がつらい。
お会計をしたら雨が降っていて、パーカーのフードを被り、ランプに戻った。
10月初旬とはいえ寒い。出発前に敷いておいた布団に入った。ああ、このせんべい布団。実家を思い出すなあ。そして畳の匂い。一体何人の旅人を、この畳が受け入れてきたのだろう。
玄関の靴箱を見たら、自分以外にも10人ぐらいの宿泊客がいるようだった。そうか、そうだよなあ。いい宿だもんなあ。次網走に来たらランプに泊まろうかな。まあ、まだ網走に来て飲み屋に行くしかしてないんだけど。
明日、網走→札幌編。ありがとうございました。
【支出】
根室→納沙布岬(往復) 1970円→ネムロマンでもらった2000円分の「根室クーポン」で支払い
納沙布岬の自販機で缶コーラ 130円
根室→釧路 2860円 →フリー
釧路駅の蕎麦屋「霧亭」天丼セット 1120円
釧路→網走 4070円→フリー
セブンイレブンでタバコとレッドブルとお茶→ 地域共通クーポンで支払い
民宿ランプ 宿泊代+ランプパン 3000円
蒸汽船 6760円
計1万1010円