北海道周遊3日目は、根室から超長距離を経て網走に到達し、オホーツクの味覚を平らげた。4日目となる今日は、網走監獄の博物館を見た後、石北本線の特急で道東を脱出。人口200万人都市・札幌をめざす。途中、アクシデント(というほどのものでもないのだが)が発生したものの、この旅でもっとも印象深く、そして長い1日となった。
網走から札幌に行く最終列車・特急オホーツク4号
朝、民宿ランプで目覚める。
昨晩の雨露が窓の外の緑に残る
朝8時ごろ、チェックアウト(鍵をリビングの所定の位置に置くだけ)して玄関の靴入れを見ると、昨晩10足ぐらいあった靴がなくなっており、自分の分しかなかった。
チェックインした時は真っ暗でよく見えなかったけど、こんな山あいにあるんだな、網走は。しかしなんて雄大な自然なんだ……思わず立ち止まって見入ってしまう。美しく彩られている山肌。秋。
昨日も通った第4種踏切の隣にはひまわり。その奥には盛り上がる山。ここからは見えないが、あのふもとには網走川が流れている
今日は網走駅からバスで「博物館 網走監獄」に行く。だがバスが来るまで1時間半ぐらいある。もっと宿でゆっくりすればいいのに。駅の待合所でダラダラする。バスで支払う小銭を確保するために近くのセイコーマート(と言っても片道徒歩5分以上かかる)まで行って、コーヒーを買ったりする。
朝の網走駅
昨日買ったランプパン。自然解凍されて、ふんわりしている
そしてバスで「博物館 網走監獄」へ。バスは途中「網走刑務所」にも止まるが、それは現在使用されている刑務所なので間違えており内容に注意(もっとも、後述するようにこちらの刑務所も観光スポット化している)。
帰りの網走駅行きバスは1時間後。それに乗らなければ、旭川行きの特急大雪(たいせつ)に間に合わない。それを逃すと、次は17:25発の特急オホーツク(札幌行きの最終列車)まで待たなければならない。急いで展示を回るが、けっこう見応えがあることに気づく。友人から聞いて楽しみにしていた「刑務所メシ」を食う時間もない。実際にいま刑務所で出されている「冷や飯」が売られているそうなのだ。それに網走駅周辺ももっと散策したい。あきらめて、のんびり回ることにした。
入場して最初に入ることになるであろう庁舎
ロシアの南下に備えて北方を開拓すべしという思惑のもと、網走に監獄ができた。被収容者の働きによって網走の街が発展した……ということがよく分かった。
しかし一番覚えているのは監獄のヒーター。暖炉の熱気を送り込んだ極太アルミパイプみたいなのを監獄の間の通路にまっすぐ通して、それで暖を各監獄に伝えるのだと。監獄の場所によって暖かさに差が出ないよう、パイプの配置には十分注意したんだとか。しかしこんなパイプで暖かくなるんだろうか……と思った。
仕事のメールで最低な気分に
のんびり網走に滞在する
見学を終える。ここで、仕事で大変面倒くさいメールが来ていることに気付く。今日は月曜日。ほかにもいろんなメールが舞い込んでくる。返信はあとでやろうと思うが、最低な気持ちになった。このタイミングでこんな内容のメールかよ。せめて来週にしてくれ。来週に来てもヘビーな内容には変わりないが。今これが届いたことで旅が暗澹たるものに変貌した。
昼飯。
味気ない
網走駅行きのバスは2時間ぐらい後。待ってられないので、歩いて帰る。まあ、時間はたっぷりある。
そう、博物館網走監獄は山の中腹ぐらいにあるのだ。なんという大自然。ここを歩いて下山していく。一応歩道はあるが、こんなところを歩く人はいない。でもひたすら歩く。仕事のメールのことはいったん忘れて。
網走川。行きのバスから見えた時、きれいだなあと思った
網走川沿いに「大曲」を歩き、「網走刑務所」に寄り道し、網走駅へ。さらっと書いたけど、下山してから駅まで1時間半ぐらい歩き通しだったからな。かなり長い道のりだった。でも楽しい散歩だった。燃え上がるような紅葉、澄み渡る青空、それを切り取る雄大な山々の稜線、時折響くなにかの鳥の声……
気持ちのいいS字カーブ
真ん中に中州があって、それを川が囲っている、というのを画角に収めようとしたらTENETみたいになった
ずっと前を見ていたくなる並木道
ガソリンスタンドの前に花が咲いていた
現在進行形で運用中の網走刑務所の前。看板にはロシア語もある
近づいてはいけない雰囲気が漂うが……
遠くから写真を撮って立ち去る観光客もいたが、実は門の中の両端には小さな展示がされている。浅草雷門で言えば風神雷神像がいる位置だ。右側は今の被収容者(「受刑者」ではなく、看板ではこの言葉を使用していた)が作った品物を、左側は「監獄」時代につくられていた品物が展示されている。
右側はこんな感じの小さな展示
網走刑務所の前、川を渡る橋から見える景色。ランドセルの小学生が歩いていたりして、ここにも生活があるんだと思わされた
駅に到着したら、アツいポストを発見
ランプの看板があるじゃないか!
で、網走駅でさらに2時間ぐらい待つ。待合所には地元の高校生がたくさん現れたり、いなくなったりして、北海道を感じさせる。運転免許を持たない彼らは、この少ない本数の列車を頼っている。
列車が熊に衝突
6時間の超長旅で疲労困憊
そしてついに来る。
特急オホーツクに乗り、仕事のメールを一気に返信した。返してしまえば後は頑張るしかない。少しだけだがスッキリした。ほんの少しだけ。返信してないという意識が免責されただけで、メールの内容についての暗澹たる気分は微塵も晴れていない。
続けざまに函館の宿を取ったり空港行きのバスを確認したり羽田行きのフライトを取ったりした。頭の中に予定を思い描いた。それで一息ついて「カニちらし」を食べた。とても美味しかった。やはり食は偉大だと感じた。
網走駅で購入。名物「カニめし」などは売り切れていた
仕事で疲れた精神を癒してくれた。かなりおいしかった。この弁当屋「モリヤ商店」について調べたら、HPに沿革が載っていて、それを読むと切なくなった。昔は網走にも観光客がたくさん来ていて、駅弁も飛ぶように売れ……
明日もまた大変な1日になると思う。これからはじめての札幌だ。北海道随一の大都市。これまで寂れた道東を旅してきたからこそ都会の良さが染み入るのだろうなと期待する一方、明日も朝から仕事でやらなければならないことがあり、暗い気持ちになる。
この旅で利用しているひがし北海道フリーきっぷは札幌小樽間もカバーしているが、午前中にミーティングがあり、時間がない。ミーティングのために明日の宿はレイトチェックアウトのプランにした。通常よりも少し高いものだ。そういうふうにして、小樽は諦めた。……まだ札幌までは長い。寝よう。幸い窓の外は真っ暗で何の町明かりもない。もう、本を読む気力もない。
列車が札幌に近づいて、最後のアナウンスのチャイムが流れたときにキタ! と喜んだ。もう座っているのも疲れた。どうやらクマと衝突したため18分遅れたらしい。クマ!! 鹿と衝突なら想定内だが、クマとは……
結局6時間もかけて札幌に着く。車窓から沢山の高いビルと灯りが見える。こんな夜なのに明るい! 都会だ! スゲー!
乗り場がたくさんある……自動改札があんなにある……若者がいっぱいいる……
地下鉄……すごい……
で、中島公園駅で降りてホテルへ。時刻は23時すぎ。あまりにも疲れていた。その理由はやはりトラブルのメールだ。どうすりゃいいんだ……考えてもできることはないので考えないようにするが、そうすると実態のない不安だけが残る。じゃあどうすりゃいいんだよ。ホテルのWi-Fi、めちゃくちゃ遅いな。使い物にならない。明日の朝のオンラインミーティング、大丈夫かな。テザリングしたほうがいいんじゃないか……ってなんで旅先でこんな仕事のことばかり考えてるんだ? いや、考えさせられてるんだ?
自販機で酒を買い、一気に煽って寝た。
明日、札幌→函館編。ありがとうございました。
【支出】
セイコマでマウントレーニア 183円
網走駅→博物館網走監獄(バス) 240円
博物館網走監獄 入場料 990円
監獄食堂 定食B 900円
セイコマでガラナ 100円
磯宴 かに・いくら弁当 1480円
網走駅→札幌駅(特急オホーツク4号) 1万10円→フリー
札幌駅→中島公園駅 (地下鉄南北線)210円
ビジネスイン ノルテ 4500円→GOTOで-1770円、楽天ポイントで2700円分支払い、支払い30円
ホテルの自販機で酒とスナック 680円(!)
計4813円