研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

オシャレ散らかし映画「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」感想

久しぶりにいい映画を見たかもしれない。おしゃれだけどラブコメなので緩急がついている。雨のマンハッタンは絵的にきれいなので、たんに何も考えずに見るのもいい。

 

f:id:liefez:20210112110513j:image

 

【あらすじ】

大学生のカップルが週末にマンハッタンに行く。アシュレー(エル・ファニング)は大学新聞の記者で、映画監督に取材に行く。マンハッタン育ちのギャツビー(ティモシー・シャラメ)はアシュレーとのデートプランを立てるが、ミーハーのアシュレーは映画の関係者たちにいろんなところへ連れまわされる。一人になったギャツビー。昔のガールフレンドの妹・シャノン(セレーナ・ゴメス)と偶然再会し、「友人が大学の課題で撮る映画」のためにキスシーンを演じたところで、雨が降り始める。

 

この「雨が降り始める」というところがポイント。1回目に見た時は、これは単なる情景描写だと思っていた。情景描写というのは、つまり登場人物の内面を、風景を描写することによって表現するという手法のこと。雨が降ったということは、登場人物がなにかマイナスの感情を抱えていることの暗示になっている。典型的な情景描写だ。

 

でも2回目を見ると、そう単純じゃないことが分かる。ああそうだ説明しておくと、僕は昨日(1月11日月曜日、成人の日、三連休の最後の日)にNetflixで、というかiPhone11Proでまず見て、翌日、つまり今日、Fire TV stickを挿したテレビで2回目を見た。で、2回目を見ると、雨はギャツビーとアシュレーが離れ離れになっているときにだけ降っていることがわかる。

 

キャラクターの対比が結構面白くて、アシュレーはミーハーで軽薄な地方の女の子という感じ。「totally」の使い方とか、たぶん日本でいうところの「マジで」みたいな感じかと思われる。アシュレーは晴れ女なのだろう、曇りは嫌とか雨は嫌とか言っている。

 

他方、ギャツビーは教養深くて都会的、というかマンハッタン出身。いちいちなにかの文学やら映画やら音楽の引用をする。バーでピアノを弾く。社交パーティに来るスノッブを嫌っているが、いちいち何かの引用をして、それに対するアシュレーの反応を見て教養レベルを推し量るといったことをしており、むしろこういうやつこそがめっちゃスノッブなんではないかと思われる。正直友達にはなりたくないのだが、たぶん教養がある人はそういうふうにして人間関係を選別していかないと、もはや満足できないカラダになっちまってるんだろう――という推測。

 

まあそんな二人なので、2回目を見ると、「この二人全然会話かみ合ってないな」という感じがする。冒頭の会話からしてそうだ。そこでシャノンというキャラクターが現れてくる。セレーナゴメスという俳優を、名前は知ってはいたけど初めて認識して、自然体な人だなと思った。演技してないように見える。シャノンという人がいて、そのまま映画に出演しているような感じ。まあそれが演技のプロの成す技なのかもしれない。

 

で、このシャノンのセリフに「Real life is fine for people who can't do any better.(現実は夢を諦めた人のもの)」というのがある。MOMAの前でギャツビーに対して放ったセリフで、このシーンを見た時、ただならぬ名言の予感がして、何度も巻き戻して聞いて、リスニングしてかみしめた。ググったら、同じことを感じている人がいて、そうだよなと仲間を得た気分になる。

ひとつのセリフを聞くだけで観る価値がある映画 #16|竹内 康夫|note

 

ウディ・アレンは「マンハッタン」「ミッドナイト・イン・パリ」だけ見たことがあったが、ああたぶんこの人はこういう映画を撮りたいんだなというエッセンスはこの2作で理解していて、だから今作も最初見た時は「まーた同じようなものを撮って」と思ったが、でもやっぱり見てて気持ちいんだよなあと「即落ち」してしまった。

 

とくにギャツビーの返しがいい。「(シャノンがデートをするという話を聞いて)その哀れな被害者は?」「(人生はすぐ飛んでいくという言葉を受けて)エコノミークラスでね」「(将来は)物理学者になってダークマターを売るんだ」「(母と話したのは)世界最古の職業について」「僕には排気ガスが必要だ」……

 

それからシャノンとギャツビーが「理想の映画のシーン」を語り合うシーンが素晴らしい。「いや、待ち合わせ場所はリバーウォークじゃなくて僕は野外がいいな……」「それでいうと、私は時計台の下で待ち合わせがいい。どう?」とか、そういう細かいこだわりを話しあうのって、なにに限らず素敵な時間だよね。

 

そしてこれは確実にこの文章を読む人に伝えておきたいのだが、ポーカーから帰ってホテルでテレビをつける、そのしぐさのあまりのスタイリッシュさというかカッコよさにほれぼれしてしまった。テレビの電源つけるだけなのにどんんだけオシャレなんだよ、ティモシャラ……

 

レイニーデイ・イン・ニューヨーク(字幕版)

レイニーデイ・イン・ニューヨーク(字幕版)

  • 発売日: 2020/11/02
  • メディア: Prime Video
 

 

昔、中高生のとき「サムデイ・イン・ザ・レイン」を繰り返し見ていて、それから大学2年生のとき「言の葉の庭」を繰り返し見ていたことがあるのだが、「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」でそれをやってみたい気持ちがある。たぶん僕には、この映画を好きになる素地がある気がしている。